野球殿堂入りを果たした岩瀬仁紀 吉見一起が語る鉄腕クローザーの素顔「誰よりも準備し、誰よりも緊張していた」 (2ページ目)
── 岩瀬さん自身は「1球目にファウルになる球で、いかにストライクを先行させるかだ」と語っていました。
吉見 先発投手も抑え投手も1球の失投で負けることはありますが、先発は7回2失点ぐらいでまとめれば「最低限の仕事をした」との評価を得られますが、抑えの場合はその失投がチームの敗戦に直結してしまいます。それだけに「初球ファウルでストライクを取る」ことに注力したのではないでしょうか。初球にストライクを取ることによって、(ストライク)ゾーンで勝負し、自分のペースでピッチングできる。実際、やるのは簡単ではないのですが、岩瀬さんは淡々とそのピッチングをやっていました。
── ひとくちに「通算407セーブ」「1002試合登板」がすごいと言われますが、具体的に岩瀬さんのどこがすごいと思いますか。
吉見 抑えの場合、走者を出すと、まず相手の"足のスペシャリスト"が出てきます。そのあたりは、先発の僕たちにはわからないプレッシャーです。そんななかで「9年連続30セーブ」「15年連続50試合登板」など、これだけの成績を継続したのはふつうでは考えられません。「1002試合登板」なんて、まるで打者と見間違うような数字です。
【さりげなく野球を教えてくれる】
── 岩瀬投手の調整法で、印象に残っていることはありますか。
吉見 自分の出番が来るまで、誰よりも準備し、誰よりも緊張している姿を目の当たりにしました。試合展開を見ながら、スイッチを入れるタイミング、登板が近づくと近寄りがたい雰囲気がありました。緊張しているのは伝わってくるのですが、マウンドに上がると淡々と打者を抑える。岩瀬さんは打者との対戦を「ああだった」「こうだった」と理路整然と言語化して、説明してくれる人でした。打者の様子をしっかり観察し、それが抑える技術につながっているのだと、感じされられました。
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