プロ生活20年の西山秀二が挙げた最も印象に残っている投手は? 「1センチ単位でコントロール」 (2ページ目)
── 逆に、失敗談はありますか。
西山 仙台での横浜戦、9回裏のサヨナラの場面。ライト前ヒットで、二塁走者の石井琢朗が本塁に突入してきました。余裕でアウトのタイミングでしたが、僕がバックホームの返球を後逸してしまったのです。雨でぬかるんだグラウンドで、バウンドしたボールがスリップしてタイミングがずれました。翌日、山本浩二監督は口を聞いてくれず、しばらくスタメンから外されました(笑)。
【印象に残る好打者の共通点】
── マスク越しに見た印象深い打者は誰ですか?
西山 いろいろなところで言っていますが、右打者は清原和博、落合博満さん、左打者はオープン戦で対戦したイチロー、金本知憲、紅白戦で対戦した前田智徳です。共通点は、ギリギリまで投球を引きつけて打つところでした。
── 金本さんは広島時代の「トリプルスリー」から、阪神時代は「40発100打点」の打者に変身しました。
西山 金本は阪神にいってからスイングの強さ、スピードが増していました。甲子園球場のライトから吹く浜風でファウルにならないよう、レフトポール際にドローボールを打ち、フェア地域のスタンドに入れていました。金本が理想にしていたのは、バリー・ボンズのスイングです。極力前に出ないように軸足にためて回転する。前田も前に泳がないように前側の足で踏ん張って、投球を押し込んでスピンを利かせて打つ。落合さんは投球をバットに乗せるイメージでした。
── では、西山さんがバッテリーを組んだなかで、印象深い投手は誰ですか。
西山 大野豊さんのパームボールのキレ。それと北別府学さんのコントロールです。1センチ単位の出し入れで勝負するのです。球審に外角低目のスライダーを「ボール!」とコールされると、意地になってスライダーを1センチ内側に入れる。次の球も1センチ内側に入れる。後にも先にも、あんな絶妙なコントロールを持った投手はいませんでした。
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