佐々木朗希はメジャーで通用するのか? 中尾孝義が「あの感覚が戻ってこないと厳しい」と指摘したポイントとは? (4ページ目)
── 上原浩治さんや岩隈久志さんら、制球力に優れたピッチャーは好成績を残せた。
中尾 そうですね。大谷なんかもそうですよ。結局、ストライクゾーンだけでは抑えられません。ボール球をいかに振らせるか、変化球をいかに際どいコースに投げられるかなんです。同じ変化球でも見切られてしまう変化球はダメなわけで、振らせられる変化球がないと。いいバッターはそのあたりを我慢できますし、打てないバッターはそのあたりを振る。これは日本でもメジャーでも同じです。
今永昇太(シカゴ・カブス)もよかったですね。彼は日本で投げていた時よりもよかったんじゃないですか。上背がない分、バッターから見るとボールの出どころが低いのですが、上から叩けているからボールが伸びる。メジャーは多くのバッターが振り上げていくから今永の高めのボールが当たりませんよね。
── 佐々木投手はプロで5年(1年目に登板がないため実質4年)を経験し、24歳を迎える年にメジャーへ挑戦するわけですが、タイミングとしてはいかがですか?
中尾 いいと思いますね。日本で経験するのも大事ですが、僕はアメリカで経験してもいいと思います。どちらでもいいと思いますし、それはもう本人次第です。ポスティングシステムのルールのなかで決まったことですし、球団が容認したわけですしね。
── 夏の甲子園出場をかけた岩手大会の決勝で温存され、プロ1年目は一軍に帯同しつつの体づくり、そして今回のポスティング。規格外のピッチャーだからこそ、その都度話題になり賛否を巻き起こしてきました。
中尾 彼はそういう運命なんじゃないですか。そういう星のもとに生まれていると言えばいいのか。だからこそ、その壁を乗り越えていってほしいんです。アメリカへ行けばもっと大きな壁が立ちはだかるはずですし、それらを乗り越えていかなければメジャーではやっていけません。
佐々木が高校時代に同じグラウンドで戦った者として、彼の成長や活躍ぶりは常に気になっているんです。引き続き応援していきますし、メジャーの舞台で成功することを願っています。
中尾孝義(なかお・たかよし)/1956年2月16日、兵庫県生まれ。滝川高から専修大学、プリンスホテルへと進み80年ドラフト1位で中日へ入団。1年目から116試合に出場し、2年目には正捕手となり打率.282、18本塁打、47打点で8年ぶりのリーグ優勝に貢献。同年はオールスターにも出場し、セ・リーグの捕手として初めてMVPに輝いた。89年にトレードで巨人に移籍。開幕からマスクを被り、斎藤雅樹のシーズン20勝を陰で支えた。92年に西武へ移籍し、翌年に現役を引退。引退後は台湾リーグも含め、多くの球団でコーチとして指導。2017年3月に専大北上高の監督に就任し、19年11月まで務めた。現在は評論家として活躍している
著者プロフィール
浜田哲男 (はまだ・てつお)
千葉県出身。専修大学を卒業後、広告業界でのマーケティングプランナー・ライター業を経て独立。『ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)』の取材をはじめ、複数のスポーツ・エンタメ系メディアで企画・編集・執筆に携わる。『Sportiva(スポルティーバ)』で「野球人生を変えた名将の言動」を連載中。『カレーの世界史』(SBビジュアル新書)など幅広いジャンルでの編集協力も多数。
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