【プレミア12】井端ジャパン逆転勝利! 隅田と坂倉のバッテリーが明かす相手の反撃を断ち切った「魔球」の使い方 (3ページ目)
一進一退の戦いで、試合が進むにつれて緊張感も増していくなか、当然ミスは起こる。5回、2番手の隅田が打たれた勝ち越しタイムリーも失投だった。隅田も「反省点」と語っている。
試合序盤から一手一手を積み重ね、韓国打線は「変化球への意識が若干強い」と坂倉も隅田も感じた。そう察したなかで伝家の宝刀のチェンジアップをより生かすためには、ストレートを効果的に使う必要がある。その1球が甘く入り、5回に勝ち越しを許すタイムリーにつながったわけだ。
隅田にとってチェンジアップはウイニングショットだが、4球種ともに決め球にもカウント球にもなる。平均140キロ台中盤のストレート、130キロ台のスプリット、120キロ台のチェンジアップ、110キロ台のカーブと絶妙な球速差も相手打者には厄介だ。以上の球種を組み合わせ、どうやって持ち味をより発揮するか。重要になるのはバッテリーの呼吸だ。坂倉はこう話した。
「全部腕を振って投げてくれることに感謝です。あとはこっちがなんとか出し入れをして、突っ込むところは突っ込んでいくという感じですね」
隅田は2イニング目の6回を無失点で抑え、首脳陣は次の回から3番手につなぐ選択肢もあったはずだ。それでも3イニング目の7回もマウンドに送ったのは、抑える確率がより高いと感じたからだろう。隅田は意気に感じて三者凡退で応えた。最後のアウトをチェンジアップで奪うと、思わず雄叫びを上げた。
「ランナーを出した回が2回ありましたけど、そこでも粘れたのはよかったと思います」
実力伯仲の緊迫した一戦で、ミスなくゲームセットを迎えることはまずない。序盤の失敗を生かし、中盤で体勢を整えて、どうリードして試合を終えられるか。チャンスで得点につなげた8番・紅林弘太郎(オリックス)、6番・牧秀悟(DeNA)、4番・森下翔太(阪神)も見事だった一方、守っては隅田&坂倉のバッテリーの粘り強さも光る一戦だった。
著者プロフィール
中島大輔 (なかじま・だいすけ)
2005年から英国で4年間、当時セルティックの中村俊輔を密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『山本由伸 常識を変える投球術』。『中南米野球はなぜ強いのか』で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。内海哲也『プライド 史上4人目、連続最多勝左腕のマウンド人生』では構成を担当。
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