【日本シリーズ2024】復活したDeNAの「お家芸」 オースティン、宮﨑敏郎が放った2発は最高の良薬 (2ページ目)

  • 村瀬秀信●取材・文 text by Murase Hidenobu

【冬眠状態から少しずつよくなっていた】

「ビッグ5」なんて言われたオースティンに佐野恵太、牧秀悟、筒香嘉智。そして、もうひとり、ベイスターズ打線に絶対に欠かせないのが、シリーズここまで1安打。ポストシーズンに入ってから明らかにその活動が冬眠状態となっていた宮﨑敏郎の復活だ。

 田代富雄コーチが言う。

「状態はよくなかったよね。問題はタイミングの取り方よ。とくに宮﨑の場合は独特のフォームだからね。一度狂うと戻すのはただでさえ難しいうえに、原因がフォームのズレによる場合もあるから、短期決戦で修正するのはすごく難しい。俺も気になるところをちょこっと言ったんだけど、それが役に立ったかどうかは本人に聞いてくれ(笑)。あいつはね、これまでも自分で解決するんだよ。今回も第2戦でヒットが出てから少しずつよくなってはいたんだけどね」

 待望の一発が出たのは、1対0のまま好投を続ける先発のアンソニー・ケイが6回のピンチを抑えた直後だった。7回先頭打者の宮﨑がソフトバンク尾形崇斗の153キロのストレートをレフトスタンドへ、眠りから目が覚めたかのようなホームラン。この一発で完全にお家芸の"勢い"がついたベイスターズ打線は、梶原昂希、森敬斗、桑原将志の連打で追加点を奪い、試合を決定づけた。

 宮﨑復活への大きな前進となるこの一発の予兆はあった。前の試合ではフォアボールを2つ選べていたこと。そして、試合前の打撃練習ではいつもより多くフルスイングで引っ張りを繰り返し、次々とレフトスタンド、時に中段へ放り込むほどすばらしい打球を放っていた。

 再び田代コーチ。

「打撃練習を見ても、いい兆候が出てきた。振れてはいるんだよ。徐々に状態はよくなっているなかで、ホームランが出たからね。今回の不振も本人なりに必死に格闘して糸口を見つけてきたんだろう。これからやってくれると思うよ」

 試合後、報道陣の前を足早に通りすぎようとする宮﨑だったが、少ない言葉のなかにも、なんとかしようともがいていたことが伺えた。

「(これまでの状態は)もう見てのとおりです。チームに貢献できること、なんとか自分ができることを考えていました。あの回は先頭バッターだったので後ろにつなぐことだけを考えて打席に立ちました。結果はああいう形になりましたけど、明日は明日なので、切り替えてまた頑張ります」

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