【ドラフト2024】くふうハヤテの元公務員投手・早川太貴が阪神から育成3位で指名 「新設ファーム球団」が示した意義 (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro

 ただ、調べたところで見つかる情報はごくわずか。それでも両親には「独立リーグと違って、プロ野球のウエスタンリーグで勝負できる」と説得すると、了承を得た。

 とはいえ、くふうハヤテの環境や待遇は、独立リーグ球団よりやや恵まれている程度にすぎない。たとえば球団寮は存在するが、その費用を払えば給料は10万円ちょっとしか残らない。かたやウエスタン戦で対戦する相手チームの選手たちは、二軍とはいえ年俸数千万円の選手も珍しくない。なかには、調整目的ために二軍でプレーするスター選手もいる。実際に、先述した開幕戦ではオリックス・宮城大弥と投げ合ったし、ソフトバンク戦では柳田悠岐とも対戦した。

「いろんな不安はありました。でも経験を積んで成長できたと思いますし、本当に全員で、選手だけでなくスタッフの方たちも一緒に頑張ってきた。周りの頑張っている姿を見て自分も頑張れたし、乗り越えられたと思います」

【調査書が届かなかったほかの選手たち】

 ドラフト会議は17時開始。約20名の報道陣に囲まれ、複数のカメラを向けられた早川は緊張しっぱなしだった。球団が自販機サイズのペットボトルの水を用意していたが、2リットルの水を持参し、何度も口をつけた。とくに表情を変えることなくモニターを見つめていたが、全球団の支配下指名が終わった時にはちょっと悔しそうに天を仰いだ。

 そして育成指名が始まると、ソワソワしているのが明らかだった。表情は同じままだったが、机の下で指先をせわしなく動かしていた。

 指名の声がかかったのは、ドラフト開始から約3時間が経過した20時3分だった。それまで無機質だった会議室が一気に熱を帯びた。「ふぅ」と大きく息をついて立ち上がった早川は「マジでよかった」とぽつりと呟いた。

「時間が経つにつれて『選択終了』の文字が苦しかった」

 ちなみに、ドラフト指名選手にはたいていの場合、NPB球団から「調査書」が届く。この日は全国各地でドラフト指名待ちの記者会見が行なわれたが、その開催有無は基本的に調査書が届いているか否かで決まるのだ。

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