高橋慶彦は江川卓の投げる以外の才能も絶賛 「大谷翔平とはちょっと毛色の違う二刀流ができた」 (2ページ目)

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin

【江川卓と小松辰雄】

 江川のすごさを解明しようとすると、まずは比較論になる。スピードだけに特化すると、同時期に活躍した「150キロの申し子」小松辰雄(元中日)の名前が上がる。高橋にも小松について聞くと、独特の表現で答えてくれた。

「江川さんとは球質がまったく違うけど、小松も速かった。江川さんのボールは低めにこないけど、小松は低めが速い。小松はどちらかと言えば、ゴムを目一杯に引っ張ってガシャンっていう球。江川さんはゴムをググッと引っ張って、しなるようにグワンっていう感じ。それに小松は小柄で、テイクバックを大きくとって投げていたけど、江川さんは小さいテイクバックからグワッーって投げる。タイプはまったく違うよね」

 178センチの体を目いっぱい使って投げる小松と、大きな体のパワーを少ない運動量でうまく腕に伝えて投げる江川。その差が、球質の違いを生み出していたのかもしれない。

「昔は面白いピッチャーがいっぱいいたよ。堀内恒夫さん、平松政次さん、米田哲也さんとも対戦したし、ヤクルトの松岡弘さんの真っすぐはえぐかった。それに84年の日本シリーズは西武が全盛期の頃で、渡辺久信、工藤公康、郭泰源もいた。90年にロッテに行った時は、ちょうど西武に潮崎哲也が入ってきて、あのシンカーはすごかった。ホームベース手前に透明のボードがあって、そこにコンと当たっているんじゃないかと思うほど、落ち方が独特だった。近鉄にも野茂英雄がいて、阿波野秀幸もよかった。阿波野の新人の時にオープン戦で対戦したんだけど、10勝すると思った。ボールのキレがすばらしかった。あと村田兆治さんのフォークもすごかったよ。(ボードゲームの)野球盤のように、ストンと落ちて消えたからね」

 昭和のレジェンドから、80年代の西武黄金期を中心としたパ・リーグの名投手たちまで対戦してきた高橋。ロッテに移籍した際、パ・リーグはパワー系の投手が多く、なかでも平気でど真ん中にストレートを投げてくるピッチャーに困惑したという。

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