高橋慶彦は江川卓の投げる以外の才能も絶賛 「大谷翔平とはちょっと毛色の違う二刀流ができた」 (3ページ目)

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin

「さすがにど真ん中のストレートは予測してないよね。あの頃のエースって、今のピッチャーと感覚が違うよね。広島で晩年の江夏豊さんと一緒にやったけど、球持ちがよくて、右打者のアウトローなんて糸を引いていたから。今のピッチャーには見られない軌道。村田兆治さんや鈴木啓示さん(元近鉄)もそうだったけど、昔の人って体全体を使ってコントロールをつけようって感じがあったけど、今はそんなことを意識しているピッチャーはいないんじゃないかな。怖さがないっていうか......でも、ボールはえげつない。松坂大輔(元西武ほか)もダルビッシュ有(パドレス)もマー君(田中将大/楽天)も、すごいボールを投げていた。それだけ進化しているんだろうけど、なんか違うよね」

【見た目も怪物だった】

 92年の現役引退後、2016年までの間にダイエー(現・ソフトバンク)、ロッテ、オリックスでコーチ、二軍監督などを歴任し、選手の気質が変わってきていることは肌で感じていた。それでも高橋にとって江川は、特別で唯一無二の存在である。

「やっぱり江川さんって何かあるよね。大学時代もすごかったっていうもんね。肩を壊す前は、平気で120メートル投げていたらしい。江川さんからしたら、マウンドからホームまでの18.44メートルの距離は16メートルくらいにしか感じていなかったのかもね。ピッチャーとしたら誰もが憧れるんじゃないかな。それに走せたら足も速いし、バッティングもいいし......大谷翔平とはちょっと毛色の違う"二刀流"ができた感じだよね」

 続けて、高橋はこう力説する。

「何度も言うけど、江川さんは見た目も怪物。よくピッチャーは『ああいうケツがなきゃダメだ』って言われていたよ。昔の人はケツの大きい人がいっぱいいたけど、江川さんは特別でかい。今でも雰囲気がある。なんやろう......色気っていうのかな。とにかくカッコいい。

 若松勉さんも掛布雅之さんも色気があって、カッコよかった。ただ打つからではなく、カッコいいのよ。今の選手は、科学的にちょっと無駄がなさすぎて、体を見てもみんな同じで、スマートになりすぎている気がする。『みんな同じジムに行ってんの?』ってね」

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