村上宗隆はなぜ53打席も本塁打が出なかったのか? サトテルが打率1割台と苦しんでいる理由は? 名コーチ・伊勢孝夫が解説 (3ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi

 これまでの佐藤は、下半身をほとんど使わず、いわば上体だけでバットを振り回すスイングだった。ある意味、それでよく24本もホームランを打てたなと感心してしまった。だから、下半身主導のバッティングになったことで、今年はどれだけホームランを量産するのだろうと期待していた。

 ところが、開幕してからなかなかホームランは出なかった。その理由は明らかで、去年までの上体に頼ったフォームに戻っていたのだ。4月5日のヤクルト戦の延長10回に決勝ホームランを放ったが、その前の4打席はホームランどころか、ヒットも出ないのではないかと思わせるスイングだった。

 ホームランにしても、いわゆる"衝突"と呼ばれるもので、スイングしたところにボールが来たものだ。その翌日にもホームランを放ったが、それも同じ。

 開幕前にできていた下半身を使ったスイングが、シーズンが始まったらできていない。結果が出ないため、気持ちがはやってしまい、体まで前にいってしまい下半身のタメがほどけてしまう。結果、壁が崩され、上体に頼った打ち方に戻ってしまった。

 このフォームだと、真ん中から高めの球はほとんど芯には当たらないだろう。開幕してからポップフライや詰まった当たりが多かったのはそのせいだ。

 これでホームランが出なければいいのだが、なまじ出てしまっているから厄介だ。佐藤自身、「これでいい」と思っているのではないか。早出特打をしているという記事も目にするが、「今のバッティングフォームでは、いくらやっても意味がない」と言いたい。

 最後に打順について、村上は4番ではホームランが生まれず、2番に変わって結果が出た。ただ、これはホセ・オスナ、ドミンゴ・サンタナが好調だからできた起用だ。このままずっと2番で使うことは考えにくく、いずれは4番に戻すだろう。その時、どのような気分で打席に入れるかだ。

 佐藤は好不調に応じて、打順を変えられている。開幕時は5番だったが調子が振るわず、6試合目のヤクルト戦から6番に下がった。そして14日の中日戦では4番。起用については監督が決めることなので部外者がとやかく言うものではないと思うが、個人的には6番が向いていると思う。クリーンアップほどプレッシャーもないし、一発打てばヒーローになれる。精神的にラクな場面で打たせたほうがいい結果を出すのではないだろうか。

プロフィール

  • 木村公一

    木村公一 (きむらこういち)

    獨協大学卒業後、フリーのスポーツライターに。以後、新聞、雑誌に野球企画を中心に寄稿する一方、漫画原作などもてがける。韓国、台湾などのプロ野球もフォローし、WBCなどの国際大会ではスポーツ専門チャンネルでコメンテーターも務める。

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