戦力外通告に「最初は、なんで?」 ソフトバンクから移籍した嘉弥真新也が「成長するにはヤクルトは最高」と語る理由 (3ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi

【周囲に教科書が多い環境】

 そんな嘉弥真について石川に聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「実績もありますし、年齢もチームのなかでも上のほうですけど、人間性がいいので僕もやりやすいです。チームに溶け込もうという姿勢がありますね。みんなでいい方向にいければと思っているので、嘉弥真の存在は刺激になりますし、大きいですよ。チームにとっても僕にとっても」

 何よりも嘉弥真にとって"教科書"となる選手、指導者が多いのもよかった。

 左右の違いはあれど、髙津臣吾監督は現役時代に嘉弥真と同じサイドスローの投手。伊藤智仁コーチといえばスライダーが代名詞だ。さらに、球界最年長投手の石川は小柄で左投手という共通項も多い。

「僕が成長するにはヤクルトは最高だなと思います。田口(麗斗)とか山本(大貴)君とか年下の投手だったり、若い投手にもいろいろ聞いています。スライダーの話がメインですが、それぞれに感覚があるので、その人の感覚が僕にも合うかもしれないと思って、聞いています。やってみて、合わなかったら合わなかったでいい。またやってみてを繰り返しています」

 34歳とベテランといわれる年代になっても、嘉弥真は成長を遂げようと、貪欲な姿勢を見せている。とくに、武器となるスライダーへの探究心は深い。

 その貪欲さはオフシーズンの過ごし方にもあった。春季キャンプの前には、今年1月にソフトバンク時代の先輩である和田毅が主催する自主トレに初めて参加していた。

「和田さんに『来てみないか』と声をかけてもらい、絶対にプラスになると思ったので参加しました。しんどかったですね(苦笑)。和田さんは『体幹で投げる』って言っていたんですけど、キャッチボールを見るだけでも勉強になります。下半身と上半身とが連動しているのを実感しました」

 走って、食べて、投げて、とハードな日々を送った。ピラティスや運動神経を刺激するコーディネーショントレーニングは、これまでに取り組んだことがなく、目新しさがあったという。

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