西武・隅田知一郎が振り返る1年目に痛感したプロの壁 「打者の弱点を見つけるのが難しい」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 隅田はいま、宮崎での南郷キャンプで順調に調整をこなしている。2月8日には今季から西武に復帰したベテラン捕手・炭谷銀仁朗を相手に、ブルペンで81球を投げ込んだ。報道陣から「スミスミ・バッテリー」の感触を聞かれた隅田は、こう答えている。

「初めて受けてもらって、いい球を投げられましたし、意思疎通できたのはよかったと思います。炭谷さんからはクロスファイアーが独特というか、いろんな方向に動くのがいいと言ってもらえました。僕もそういう意識で投げているので、そこを伸ばしていきたいですね」

 大学時代よりも右足をダイナミックに上げる躍動感のある投球フォームと、指にかかったストレートのキレは目を見張った。とくにブルペンではストレートを重点的に投げ込み、強化しているように見えた。

【プロは弱点を見つけるのが難しい】

 練習を終えた隅田を直撃すると、「(ストレートの強化は)今日だけじゃないですね」と言って、こんな狙いを明かした。

「バッターにも相性はありますけど、このバッターには(ストレートで)差し込めるけど、このバッターには差し込めない......ではいけないので。どのバッターでも差し込めるようなボールを投げたいんです。まあ、究極ですけどね」

 大学時代の隅田が高く評価されたポイントは、ウイニングショットとして使える球種の多さにあった。ストレート、スライダー、カットボール、フォーク、チェンジアップ、ツーシーム、カーブ。7球種を決め球として操れる大学生左腕など、どこを探してもいない。

 だが、プロの世界では通用する球とそうではない球があった。「大学野球の打者とプロの打者は何が違いましたか?」と尋ねると、隅田は少し考えてからこう答えた。

「プロのバッターは一人ひとり、軸があります。たとえば、選手によってどのボールを打つか『目付け』をしている。そこは大学生ではやっていない部分ですね。やっぱり弱点を見つけるのが難しいです」

 隅田の言う「目付け」とは、プロの打者がよく使う用語である。打者はボールの軌道を予測するために、投手がボールをリリースする前後に着目するポイントを決めている。このポイントが「目付け」になる。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る