細川亨が語る野村克也からの印象深い称賛と苦言 薫陶を受けた7人の指揮官の特徴とは

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi

細川亨インタビュー(中編)

前編:目からウロコだった「西武の捕手の座り方」はこちら>>

 細川亨氏は現役時代、西武、ソフトバンク、楽天、ロッテの4球団でプレーし、7人の監督に仕えた。それぞれの指揮官の采配、特徴を語ってもらうと同時に、かつて野村克也氏が楽天の監督時代に細川氏を絶賛したエピソードについても明かしてもらった。

ソフトバンク移籍後も攻守に存在感を発揮し、黄金時代を支えた細川亨氏 photo by Sankei Visualソフトバンク移籍後も攻守に存在感を発揮し、黄金時代を支えた細川亨氏 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る

【秋山監督の繊細な采配】

── 西武時代は、2002年の伊原春樹監督、2004年の伊東勤監督、2008年の渡辺久信監督と、それぞれ就任1年目に細川さんがマスクを被り、すべて優勝を遂げています。それぞれの監督の印象はどうでしたか。

細川 伊原監督は三塁コーチャーが長かったので、相手の隙をつく野球でした。伊東監督は捕手出身らしく、先々を読む野球でしたね。延長12回から逆算しているのではないかと思うぐらい、緻密で繊細でした。対照的に渡辺監督は投手目線で、代える時はスパッと代えるなど継投に特徴がありました。「なんで打てねぇんだよ」とつぶやくのも、投手出身らしかったですね(笑)。

── ソフトバンクでは秋山幸二監督、工藤公康監督のもと日本一を経験しました。

細川 秋山監督は、現役時代の印象から豪快な野球をする印象があるかもしれませんが、とても繊細な采配です。「データの使い方をもう少し考えてみなさい」と指摘されたことがありました。投手の足の上げ方や、打者のスイング軌道までよく観察されていました。また一軍、二軍の全選手の動画を見て、好不調を把握していました。入れ替えのタイミングを計っていたのでしょう。工藤監督は投手の動作解析が得意で、あたかも自分がマウンドに立っているような感覚で、試合に入り込んでいました。

── そして楽天では梨田昌孝監督、ロッテでは井口資仁監督のもとでプレーされました。

細川 梨田監督は捕手出身らしく堅実な野球をする一方、近鉄の監督時代は「いてまえ打線」を指揮するなど、豪快な一面もありました。それに張り詰めた緊張感のある時にダジャレで和ませてくれるメリハリが効いた指導者でした。井口監督はメジャーでプレーしていたこともあって、序盤のバントは少ないですが、荻野貴司や藤岡裕大に代表されるように盗塁やエンドランを積極的に使ってきます。先々の流れを読むというより、自ら流れをつかむ野球という印象を受けました。

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