殿堂入り・谷繁元信のリード術を吉見一起が回想「わざとヒットを打たせておいて、大事な局面では90〜100%の確率で仕留める」 (2ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi

── つまり、それが「エサをまく」リードなのですね。

吉見 こういうリードが同じ試合の終盤の打席や、次の試合の対戦で生かされます。そんな勝負の仕方を谷繁さんから教わりました。僕がたくさん勝てたのは、谷繁さんのリードのおかげです。

── 吉見さんは常に"貯金"を稼げる投手として、中日黄金期を支えました。

吉見 当時はチェン・ウェインという150キロを超すストレートが武器の左腕がいました。当然、僕とチェンのリードは違ったはずです。僕は「フライアウト、フライヒットはダメ。ゴロアウト、ゴロヒットならOK」と谷繁さんに言われていました。なぜOKなのだろうと思っていましたが、そう言われると精神的な余裕が生まれ、いい意味で割り切って投げることができました。

── 谷繁さんにリードされ、吉見さん自身も考えながら投げるようになりましたか。

吉見 谷繁さんの厳しいリードに応えるため、どうすればいいのかを考えていましたね。スライダーやフォークをそれぞれ2、3種類ずつ、スピード差や曲がり幅を変えるなど、投げ分けていました。引退してから、谷繁さんに「吉見って、スライダーやフォークを状況によって投げ分けていたよな」って言われて......谷繁さんが出したリードの"問い"に対して答え合わせができた。うれしかったですね。

【試合後は全身アイシング】

── 谷繁さんはミットを動かさないキャッチングが有名でした。

吉見 僕自身、ミットを動かされるのはあまり好きではありませんでした。最近は"汚い回転"のボールが流行っていますが、僕は「きれいな回転」のボールを投げたかったし、こだわっていました。ミットを左右に動かされると「あれ、球が曲がっているのかな」と思ってしまう。

 あと、投げる瞬間にミットを一度落とす捕手もいますが、ミットを上げたまま構えてそのまま捕球して止めてくれる捕手のほうが僕は好きでした。投げる時に目印になりますから。だから、僕は谷繁さんのキャッチングがすごく合っていました。

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