奥川恭伸とのキャッチボールで急成長 指揮官も認めた逸材、ヤクルト2年目の坂本拓己から目が離せない

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

 昨シーズン、ヤクルトのルーキー・坂本拓己は、急がず焦らず、すくすくと育っていった。二軍で8試合(15回1/3イニング)に投げて1勝0敗、防御率1.76。伊藤智仁投手コーチは、10月のフェニックスリーグで坂本のピッチングを初めて見て、笑顔を見せた。

「いいねぇ。フレッシュで、新鮮で、ピチピチしてるよ! 将来の先発ローテーションを期待していますよ」と同じ表現の言葉を重ねるほど、若さあふれるボールだった。

 11月は愛媛・松山での秋季キャンプ、12月には戸田球場で先輩の金久保優斗らとの自主練習で課題と向き合い、年が明けてからは6歳上のドラフト同期の吉村貢司郎と自主トレ。今年はみるみる成長していく坂本の姿が想像できるのだった。

今季プロ2年目、一軍での登板を目指すヤクルト・坂本拓己 photo by Sankei Visual今季プロ2年目、一軍での登板を目指すヤクルト・坂本拓己 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る

【夏バテしながらも自己最速をマーク】

 2022年、坂本は知内高(北海道)3年夏の南北海道大会で49イニングを投げ49奪三振。力強い真っすぐとスライダー、カーブ、チェンジアップ、そしてどんな打者にも向かっていける気持ちを武器に、チームを創部初の決勝へと導いた。その年のドラフトでヤクルトから4位指名を受けて入団。

 プロ生活は新人合同自主トレから本格スタート。鈴木秀紀パフォーマンストレーナーは坂本の最初に印象について、次のように語る。

「体重はあったのですが、体脂肪率が多かった。簡単に言えば太っている状態だったので、彼の身長(180センチ)に対して筋肉量がどれくらい必要なのかを計算しました。85キロをキープしつつ、余計なものをなくして頑張っていこうとやってきました」

 山本哲哉二軍育成投手コーチとは「安定した球速を出せるように」と、時間をかけて体づくりに励んだ。

「投げるだけじゃなく、ウエイトをして、トレーニングをして、走って......坂本にとっては、これまでに経験したことのないしんどさだったと思います」

 プロ初登板はイースタン公式戦が開幕してから約1カ月後の4月21日の西武戦。1イニングを無失点に抑え、最速は143キロを記録した。その後は3週間ほど間隔を空けながら登板。5月28日の巨人戦では調整中だった菅野智之と投げ合い、自身最長となる3イニングを投げるも最速は139キロにとどまった。

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