2023年野球界10大ニュース 球界をざわつかせた事件、現役ドラフトの明暗、超大物の決断... (5ページ目)
高校通算140本塁打を放った花巻東の佐々木麟太郎 photo by Ohtomo Yoshiyukiこの記事に関連する写真を見る
【高校通算140本塁打の佐々木麟太郎が米国留学】
高校通算ホームランは歴代最多となる140本。2023年ドラフトの目玉選手のひとりに挙げられていた花巻東の佐々木麟太郎が決断した進路は、プロではなくアメリカの大学への進学だった。
チームがベスト8に進出した夏の甲子園から間もない9月に渡米。複数の大学の施設を見学したなかで、野球のキャリアだけでなく人間的にも成長できると刺激を受けたことが大きな決め手となったとされている。
花巻東にとって、アメリカ球界への挑戦は決して意外な選択ではない。前例のひとつが2009年の菊池雄星だ。夏の甲子園ベスト4の立役者は直前まで高卒でのメジャーリーグ挑戦を望んでいながら、周囲の反発もあり進路を日本のプロに変更。ドラフト1位で西武に入団している。
さらに2012年夏の岩手県大会で当時の高校生最速となる160キロをマークした大谷翔平は、ドラフト前までアメリカへ行くことを明言。最終的に1位で強行指名した日本ハムへの入団を決めたが、メジャー挑戦は現実味を帯びていた。
その後、菊池と大谷は日本球界からメジャー移籍を果たし、アメリカでも結果を残す。これが後押しとなったのか、後輩である佐々木の決断は世間から好意的に受け入れられている節がある。
これまで、メジャーの球団からドラフト指名された日本人は5人いる。02年の坂本充(九産大九州高ーアリゾナウエスタン短大ーロッキーズ24巡目)、08年の鷲谷修也(駒大苫小牧高ーデザート短大--ナショナルズ42巡目。09年にも14巡目で同球団から指名を受けた)と藤谷周平(ノーザン・アイオワ大ーパドレス18巡目)。13年の加藤豪将(ランチョ・バーナード高ーヤンキース2巡目)。23年の西田陸浮(東北高ーオレゴン大--ホワイトソックス11巡目)。このなかに日本国内で「ドラフト1位候補」の選手はいない。
それだけ佐々木の事例は珍しい。だからこそ、アメリカの大学で結果を残し「メジャーで1巡目指名を」と期待したくなる。
著者プロフィール
田口元義 (たぐち・げんき)
1977年、福島県出身。元高校球児(3年間補欠)。雑誌編集者を経て、2003年からフリーライターとして活動する。雑誌やウェブサイトを中心に寄稿。著書に「負けてみろ。 聖光学院と斎藤智也の高校野球」(秀和システム刊)がある。
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