斎藤佑樹がリハビリで得た新発見「正しいフォームを求めようとするといい時に近づく」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta

 キャンプに入って中垣さんが最初に取り組んでくれたのは、痛みの理由を解き明かすことでした。右肩にまだ痛みが残っていると感じるなら「それは関節唇が理由じゃない。もう炎症は収まっているはずだから」と言うんです。中垣さんは、僕の筋肉の動かし方に問題があるんじゃないかと指摘しました。

 痛むのが怖いと、どうしても肩がすくんじゃう。そうすると、僧帽筋の上部に力が入ってしまいます。痛みをかばっているせいで僧帽筋の上のほうばかりを使ってしまうと、僧帽筋の下部と肩甲骨の下の筋肉を使わなくなってしまうんです。同時に、僧帽筋の上部ばかりを使うことでそこだけに負担がかかって、疲れてしまっていた。そのせいで肩の痛みが続いていると思い込んでいたんです。

 中垣さんが最初、僕に「うつぶせになって」と言って右腕を持ち上げられるかどうかを確かめたのは、それを確認するためでした。僧帽筋と肩甲骨の下部の筋肉が効いていないと腕は上がらない。だからまずは正常なポジションを理解して、腕をこう使うためにここの筋肉をこう動かさなきゃダメだ、ということをもう一度、身体に思い出させる必要があったんです。

 今までこんなに野球を一生懸命やってきたのに、じつは身体のことをまったく知らなかったんだなと気づかされました。キャンプの間の1カ月、身体はどう動かしたら正しく動くのかということを、中垣さんやほかのトレーナーさんたちに教えてもらいながら、とことん学び直しました。

【自分だけが置いていかれる寂しさ】

 3カ月と覚悟を決めたつもりでしたが、それでも不安な気持ちはなかなか拭えませんでした。いつ投げられるようになるだろうという不安と、早く試合で投げたい焦りは簡単には消せません。もちろん暖かくなったらブルペンに入って、夏までには一軍で投げたいと考えていました。

 ただ、ずっと野球を続けていくうえで、この1年はいろいろ鍛える期間だと思わなくちゃいけないのかな、とも考えるようになっていました。とにかくあの時は「肩は治る、肩が治ったら以前よりもよくなる」と自分に言い聞かせていたんです。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る