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巨人・阿部慎之助新監督のポリシーを広岡達朗は大絶賛も「優勝はあと3年かかると見てあげたほうがいい」 (3ページ目)

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin

 かつて西武の主軸で活躍した大田卓司は、広岡の監督としての手腕を次のように評価していた。

「広岡さんが監督に就任して初めての春季キャンプでのランニングで、オレは長距離走が苦手だからビリッケツで走っていましたが、広岡さんは選手と一緒に颯爽と走っていましたよ。それと82年に日本一になった大きな要因は、シーズン中に監督と選手で話し合いをしたことです。5月の終わり頃、監督との間に溝ができて選手たちは鬱憤がたまっていた。それで選手たちが集まって、そこに監督を呼んだんです。田淵(幸一)さんや東尾(修)さん、森繁和などがそれぞれ言いたいことを監督にぶつけました。広岡さんはうんうんと頷きながら最後まで聞いていました。あれで選手たちはまとまったんです」

 選手たちの言い分を、広岡はただ黙って聞いていた。だからといって、何かを変えるわけでなく、それまでどおり振る舞っていた。その場にひとりで現れ、反論することなく話を聞いてくれたことで、選手はすべて吐き出すことができた。それが何よりも大きかったのだ。

「昔の選手と気質が違うから昭和のようなスパルタ指導がダメと言うのなら、その気質の違う選手をどう導くかが新しいモノを取り入れるということではないのか。新しいモノを積み重ねるだけでは、組織は盤石にならない。組織を高みに導くのに、古いも新しいもない。頂上に行くために必要なことは何か、己に足りないものは何かを俯瞰(ふかん)して見ることができれば、やるべきことは決まってくる」

 そして最後に、広岡はこう期待を込めて阿部新監督にエールを送った。

「コーチの意見に耳を傾け、最終的に監督が決める。全責任は監督が負うというチームが、今も昔も絶対的に強いんだ」

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著者プロフィール

  • 松永多佳倫

    松永多佳倫 (まつなが・たかりん)

    1968 年生まれ、岐阜県大垣市出身。出版社勤務を経て 2009 年 8 月より沖縄在住。著書に『沖縄を変えた男 栽弘義−高校野球に捧げた生涯』(集英社文庫)をはじめ、『確執と信念』(扶桑社)、『善と悪 江夏豊のラストメッセージ』(ダ・ヴィンチBOOKS)など著作多数。

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