ヤクルト長岡秀樹の「逆襲のシナリオ」実力不足を思い知らされた失意の1年 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya

 長岡もそのことは十分に理解している。

「昨年はずっと8番を打たせてもらい、今年は2番を任されるかも思っていたのですが、できませんでした。チームには本当に頼もしい3、4、5番がいますので、その前を打ちたいですし、そのためにも出塁率を高くしたい」

 実際、逆方向だけを意識したバッティングをする日もあれば、送りバントを3回した試合もあった。

「(逆方向の打席は)2ストライクに追い込まれてから、どうしたら三振をしないかを考えたというか......そういう意識の打席でした。バントはサインだけでなく、自分からした打席もありました」

 昨年は成功率100%(10回)を誇ったバントだったが、今年は13回のバント機会で成功したのは7回。ほぼ半分は失敗だった。

「本当に技術がなかったんですけど、一回失敗してしまうと『また失敗したらどうしよう』とか、そんなメンタルになってしまったこともありました。バントする時に構える足がバラバラで、こっちで成功しなかったら次はこっち、それでもダメだったら今度はこっちと」

 自分の形を最後まで見つけられなかったと、長岡は言う。

「今はコーチに聞いたり、先輩に(宮本)丈さんというすごいお手本もいますので、いろいろ質問させてもらっています。徐々にですが自分の形はできてきたのかなと。大事なのはピッチャーの生きた球で決めることなので、試行錯誤しながら練習するしかないと思っています」

【イージーこそ丁寧に】

 一方、守備では二塁や三塁も守った。

「ほかにもショートを守る選手はいますし、セカンドもサードもできるにこしたことはないので、いい経験だと思っています。セカンドは1年目、2年目の時にファームでやっていましたけど、あらためて併殺時のトスなど、いつもと逆の動きになるので、こんなに難しいんだなと」

 フェニックスでは、土橋勝征育成チーフコーチとの久しぶりの特守もあった。土橋コーチが「イージーこそ」と問いノックすると、長岡が「丁寧に!」と即答して捕る。終盤には「おっ、頑張る力がついてきたな」という褒め言葉も出た。流れるような動きと安定したスローイング。見ていて飽きのこない30分間だった。

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