阪神・佐藤輝明はどうすれば真のスラッガーになる? 名コーチ・伊勢孝夫が挙げる3つのポイント

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Koike Yoshihiro

 一時の不振から脱し、首位を走るチームの得点源として存在感を示す「サトテル」こと佐藤輝明。持ち前の長打力も健在で、ここまで(9月5日現在)チーム最多の17本塁打をマークしている。その一方で好不調の波が激しく、常に"豪快さ"と"脆さ"が同居している。はたして、サトテルのバッティングの改善点はどこにあるのか。さらなる飛躍のためにすべきことは何なのか。かつて名コーチとして多くのスラッガーを育てた伊勢孝夫氏に解説してもらった。

チーム最多の本塁打を放ちながら不振で二軍落ちするなど、好不調の波が激しい阪神・佐藤輝明チーム最多の本塁打を放ちながら不振で二軍落ちするなど、好不調の波が激しい阪神・佐藤輝明この記事に関連する写真を見る

【村上宗隆とのボール一個分の違い】

 現在の佐藤のバッティングを見て、一時のことを思ったら、上り調子になっているのは間違いない。具体的に言えば、やや低かったグリップの位置が上がり、好調時の高さに戻ってきている。彼もいろいろ考え、工夫した結果、今のグリップ位置に落ち着いたのだろう。ただし、気になる点も少なくない。

 まず佐藤という打者を見る時、以下の3つのポイントが挙げられる。

①スイングなどの技術面
②打席での読み
③打撃に対する意識

 これらすべてがはまっている時は好結果が出て、ひとつでも狂ってくれば凡打になる。爆発力はあるが、それ以上に脆い打者だというのがわかる。

 ①の技術面だが、佐藤が同じ左の強打者である村上宗隆(ヤクルト)と異なるのは、打球方向である。村上の好調時はセンターを中心に、レフトスタンドにも放り込める。それに対して佐藤の打球はライト中心だ。センターへの打球もあるが、レフト方向の長打は極めて少ない。

 理由はポイントの違いだ。好打者ほどボールを引きつけて、センターにはじき返すようなバッティングをする。引きつける分、それだけボールを長く見られるわけである。その点、佐藤は村上と比べるとボール一個分ほど投手寄りでとらえている。

 この一個分の違いはものすごく大きく、たとえば同じボールをとらえたとしても、村上の打球はレフトへのヒットになるが、佐藤の打球は平凡なセンターフライになる。さらにポイントが前にあるということは、落ちる系への反応も悪くなる。いくら長打力があっても、しっかり呼び込めないことには確率が下がるし、なかなか好調を維持できない。

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