梨田昌孝が振り返る「江夏の21球」無死満塁になって西本幸雄監督の表情が「ふっと緩んだように見えた」 (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • photo by Sankei Visual

――グラウンドにいる選手全員を隈なく見ていた?

梨田 そうですね。選手、あるいはコーチもそうでしょうけど、本当に油断も隙もなかった。食事時間も15分ぐらいしかなくて短かったですが、「弱いチームなんだから休憩なんかいらない」と言っていましたね。

――広岡さんは"管理野球"の一環として、食事の管理に関しても徹底されていたようですが、西本監督はどうでしたか?

梨田 広岡さんは確かにそうでしたね。広岡さんがヤクルトか西武、どちらの監督をされていた時かは忘れてしまったのですが、一緒に食事をしたことがあって。その際に広岡さんはお酒も飲んでいたし、普通にお肉も食べていたので「選手の食事には厳しいですよね?」と聞いたら、「選手は当たり前だよ。僕はもう監督だから関係ないんだ」と笑っていました。

 それに対して西本さんは、食事のことに関しては特に何も言いませんでした。今と違って、当時は「これって栄養になるの?」という食べ物も多かったですし、まだ栄養学も浸透していなかったですからね。キャンプや遠征では、鍋物が多かったかな。

――先ほど、グラウンドにいる選手全員を隈なく見ているという話がありましたが、ブルペンでも同じでしたか?

梨田 私が監督をやるようになって数年経った頃に、野村克也さんから「ナシはピッチャーって気にならないか?」と聞かれたことがあって。私が「気になりますね」と答えたら「そうだよな。でも、西本さんは全然ブルペンに行かないぞ」という話になって。その通りで、西本さんはキャンプの時も含めて本当にブルペンには行かないんですよ。なぜかというと、本人曰く「見てもわからんから」と(笑)。野手は寸分の隙もないくらい見ていましたけど、ピッチャーはコーチに任せるスタンスでした。

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