プロ野球選手でも答えられないルール!? スリーバントの誤解、人気漫画の名シーンなど元プロ審判・坂井遼太郎が解説 (3ページ目)

  • 小林 悟●取材・文 text by Kobayashi Satoru

●選手の9割が間違える?スリーバントのルール

 さてこれから夏本番、高校野球が盛り上がるシーズンだ。攻撃の定番作戦、バントに関して大半の人が誤解しているルールがあるという。

「実は、スリーバントのルールに関してはアマチュア野球の審判でも5割、選手の9割が間違った解釈をしています。

 2ストライク後の投球をバントしてファールになった場合、アウトになってしまうというのはみなさんが知っているとおり。ただし、ボールが当たる瞬間によけようとしてバットを引き、ファールになったら? 答えは通常のファール。アウトにならないんです」

写真/本人提供写真/本人提供 そもそも、多くの人が間違えてしまう理由は、バントとは何かという定義があやふやだからだという。

「バントとは『バットをスイングしないで内野を転がるように意識的にミートした打球』。"内野を転がるように意識的に"であるかどうか、スリーバントの場面ではここに注目してみてください」

●「危険球! 退場!」は日本の独自ルール

 最後に日本のローカルルールをひとつ。

「プロ野球でピッチャーの投げた球がバッターの頭部に当たった場合、または当たりそうになった場合、『危険球! 退場!』となります。でも、本場メジャーリーグやWBCのような国際大会、日本のアマチュア野球ではこのようなシーンを見たことがないはず。じつは公式ルールブックに載っていないのです。

 危険球とは、打者の選手生命に影響を与えるかどうか、とアグリーメント(内規)で定められている日本のプロ野球独自のもの。投球がバッターの頭部付近を襲っても、退場にならない場合にどうしてだと思う人もいるでしょうが、カーブなどの変化球がすっぽ抜けた場合は、スピードが出ていないので危険球にはならないと判断されるんです」

 これほど"考えるスポーツ"だからこそ野球は本当に深く、じつに面白い。

前編<阪神・金本知憲の天井直撃打球を1軍審判デビュー戦で誤審→ネットで批判の的に 元NPB審判が語る「正しくて当たり前」の重圧>を読む


【プロフィール】
坂井遼太郎 さかい・りょうたろう 
1985年、大阪府生まれ。金光大阪高卒業後、ジム・エバンス審判学校(アメリカ)での研修を終えて2007年にセ・リーグ審判員となる。2010年には4年目の早さで1軍戦に出場。2017年にはオールスターゲームも経験し、2018年にプロ野球審判員を引退。現在は起業し、全国の大学野球リーグ戦を無料配信する事業やYouTuberなどとして活動している。

プロフィール

  • 小林 悟

    小林 悟 (こばやし・さとる)

    フリーライター。1981年、福井県生まれ。週刊誌『サンデー毎日』(毎日新聞出版)、『週刊文春』(文藝春秋)、『集英社オンライン』(集英社)などで食や暮らし、スポーツにまつわる話題を中心に執筆。

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