パ・リーグ新人王中間報告 本命はオリックス山下舜平大 攝津正が挙げた対抗馬は? (3ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Koike Yoshihiro

── 日本ハムのドラフト3位、メジャー経験のある加藤豪将選手はいかがでしょうか。

攝津 キャンプからケガで出遅れたことは残念でしたが、デビューから10試合連続安打や1試合2本塁打をマークするなど、存在感を示しています。スイングはコンパクトですが、スイングに強さがあります。アメリカでプレーしただけあって、強い球への対応力を感じました。

── 当初、パ・リーグの新人王争いを牽引すると思われていた、大卒ドラフト1位の荘司康誠(楽天)投手、曽谷龍平(オリックス)投手はどう見ていますか。

攝津 荘司投手は「同じ立教大の楽天の長身投手」ということもあって、戸村健次(2009年ドラフト1位)投手を彷彿とさせます。いい投手だと思って見ていました。投球フォームに力感はあまりありませんが、球威があります。打線との兼ね合いで、ここまで9試合に先発してまだ1勝ですが、何かのきっかけで勝ち出すと思います。

── 曽谷投手はいかがですか。

攝津 曽谷投手は私の高校(秋田経法大付→現・ノースアジア大明桜)の後輩ですので、気にかけていました。ストレートとスライダーが中心ですが、まだ投球スタイルが確立していない印象を受けます。オリックスは投手陣の層が厚いので、曽谷投手もかなりいい投球をしないと一軍で投げられません。即戦力というより、"素材型"かもしれませんね。逆に言えば、オリックスは毎年好投手が育つ環境にあるので楽しみです。

── 近年の傾向も鑑みて、新人王を手にする選手の特徴はありますか。

攝津 ここ数年、高橋礼(ソフトバンク)投手、平良海馬(西武)投手、宮城大弥(オリックス)投手、水上由伸(西武)投手とピッチャーが続いています。野手は、2018年の田中和基(楽天)選手以来、出ていません。しかも田中選手を含め、5年連続で入団2年目の選手が受賞しています。つまり最近の傾向として、即戦力よりも素材型の選手が新人王を獲得しているように思えます。

── 最後に、いま新人王を争っている選手にアドバイスをお願いします。

攝津 シーズン後半は疲れてくると思いますが、自分の個性を生かしここまで活躍してきたのです。もしこれまでのような活躍ができなくなったとしても、いま持っているものを変える必要はないと思います。それよりもどのようにして対応されてきたのかを把握することが大事です。たとえば、ウイニングショットを研究されて狙われたとします。その際、新たな球種を増やすのではなく、投げるボールの割合を変えてみる。そうしたちょっとした工夫が、効果的に働くと思います。


攝津正(せっつ・ただし)/1982年6月1日、秋田県出身。秋田経法大付高(現・ノースアジア大明桜高)3年時に春のセンバツに出場。卒業後、社会人のJR東日本東北では7度(補強選手含む)の都市対抗野球大会に出場した。2008年にソフトバンクからドラフト5位指名を受け入団。抜群の制球力を武器に先発・中継ぎとして活躍し、沢村賞をはじめ、多数のタイトルを受賞した。2018年に現役引退後、解説者や子どもたちへ野球教室をするなどして活動。通算282試合に登板し、79勝49敗1セーブ73ホールド、防御率2.98

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る