「こういうピッチング方法もあるな...」 ヤクルト・清水昇がチェコの投手から学んだパワー全盛時代だからこそ生きるヒント

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Taguchi Yukihito

 昨年5月21日、横浜スタジアム。4年目のシーズンを迎えていたヤクルトの清水昇は、ひと気のない内野観客席の通路をレフトポールからライトポールに向かってウォーキングしていた。時間は朝9時で、5時間後にはDeNAとのデーゲームが待っていた。

 DeNAの関根大気はその姿を見つけると、グラウンドでの早出練習を中断し「早いね」と手を振った。清水は「ウォーキングしていると頭の中がクリアになり、前日の反省点や試したいことが湧き出てくる」と、前年からルーティンとして取り入れ、この日は途中から軽いランニングとなり40分ほどで切り上げた。

5年目のシーズンを迎えるヤクルトの清水昇5年目のシーズンを迎えるヤクルトの清水昇この記事に関連する写真を見る

【屈辱のプロ1年目】

 2019年6月1日、清水はこの横浜スタジアムでプロ初登板・初先発を果たすも、4回5失点で敗戦投手となった。そればかりか、球団ワーストの16連敗に並んだ試合でもあった。その後、2度の先発のチャンスを与えられたが期待に応えることはできず、悔しさだけが残る1年目だった。

 あの日から3年が経とうとしていることについて聞くと、清水は額の大粒の汗を拭い、しばらく考えをめぐらせてから言葉にした。

「僕にとってはまだ3年ではなく、もう3年なのかなという感じです」

 清水の年度別成績を眺めるのは楽しい。なぜなら、数字の変化にしっかりとした根拠があるからだ。

2019年 11試合/0勝3敗0ホールド/被本塁打7/防御率7.27
2020年 52試合/0勝4敗30ホールド/被本塁打10/防御率3.54
2021年 72試合/3勝6敗50ホールド/被本塁打12/防御率2.39
2022年 50試合/5勝4敗28ホールド/被本塁打1/防御率1.16

 2年目は「とにかく真っすぐを低めに」を強く意識し、シーズン途中から勝ちパターンの中継ぎに組み込まれると、NPB史上初となる0勝でタイトル獲得(最優秀中継ぎ)した。

 3年目の春季キャンプでは、投手・野手問わず「自分のピッチングはどうですか」と、石川雅規、青木宣親、山田哲人らを質問攻め。年間最多ホールド記録を樹立し、防御率も改善された。

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