ヤクルト石川雅規「勝てない自分が恥ずかしいと思った30代半ば」を乗り越えて 43歳の今「まだまだ野球がうまくなりたい」 (3ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi
  • photo by Wada Satoshi

●「往生際が悪いので」

ーーコンディショニングをとても大事にされている印象があります。特に気をつけているのは?

 股関節周りや胸郭周りの柔軟性だったり、お尻をしっかり使うトレーニングは、意識的に取り組んでいます。

 自分の体をしっかり使うには柔軟性って大事ですし、コンディショニングにもつながりますから。

 もともと体はあんまり柔らかくなかったんですけど、だいぶ柔らかくなりましたね。しっかりとやり始めたのは、昨年のオフからですが、感覚はだいぶ変わりました。めちゃめちゃ良いですよ!

 何をやるにしても、自分を実験台として、自分の感覚でやるしかないので難しいですけど。1年間通して取り組んでみて、どうなるか、ですね。

ーー失礼を承知でお聞きしますが、引き際を考えることはあるのでしょうか?

 めちゃめちゃありますよ。昔はカッコいいやめ方はどんなものかと漠然と考えていました。今は逆に"肩肘がぶっ壊れて投げられません"ってなったら、わかりやすくやめられるのかな......。

 僕は往生際が悪いので。いつかやめる日は来るので、それまでは全力でやりたいなと思います。

ーーまだまだやれる実感がある?

 はい。まだまだできると信じていますし、契約していただける以上、選手としてチームのためにやりたいです。

"楽しんでやる"というのはあまり好きではないんですけど、そういう気持ちも大事なのかな。今は本当に、毎日野球ができることに喜びを感じながらプレーしています。

 変な話、失うものは何もないんですよ。昔は、なかなか勝てない時期、特に30代半ばのしんどい時期に、苦しむ姿を見せたくないとか勝てない自分が恥ずかしいとか思ったんですけどね。

 でも、そういうのを受け入れたら、気持ちがすごくラクになった。現状を把握して頑張るのが一番だなって、今はポジティブに考えられますし、思いきって野球ができているかなと思います。

ーーインタビュー後編では、22年目のシーズンの目標、200勝への思いなどを聞いていく。

後編<43歳ヤクルト石川雅規の目標は「山本昌さん超えの220勝」 体は小さくても「プロでもやれるんだぞって示せているかな」>


【プロフィール】
石川雅規 いしかわ・まさのり 
1980年、秋田県生まれ。秋田商高、青山学院大を経て2002年自由獲得枠で東京ヤクルトスワローズに入団。1年目に12勝を挙げて新人賞を獲得すると、そこから5年連続2桁勝利を達成。2008年、最優秀防御率(2.68)をマークし、ゴールデングラブ賞も手にした。2022年には史上3人目の新人から21年連続勝利を記録。2022年までに2桁勝利11回、通算183勝。167センチの小柄な体格から「小さな大投手」と呼ばれる。

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