日本をWBC1次リーグ全勝突破へと導いた「勝利とロマンの栗山流二刀流采配」を紐解く3つの決断 (2ページ目)
「(日本代表のユニフォームは)僕自身、本当に特別ですし、相手の中国も素晴らしい野球をやっていて、本当に中盤、わからなかったゲーム(6回まで日本が3−1とリードは2点)だと思うので、全員で勝つことができて、すばらしいゲームだったなと思います」
4連勝への流れをつくるためには、中国に勝つだけでなく、どうやって勝つかが求められていた。栗山監督は日本代表の戦い方を大谷によって示し、大谷はこの試合の勝ち方でWBCの空気を見事に支配してみせたのである。
2 ラーズ・ヌートバーを日本代表に加えたこと
1番センター、ラーズ・ヌートバー──1次ラウンドの4試合、彼はすべての試合でヒットを放ち、日本代表の切り込み隊長としてチームを準々決勝へ導いた。
そもそもWBCの出場資格に照らし合わせると、ヌートバー以外にも日本代表に選ばれておかしくないメジャーの選手は何人かいた。クリスチャン・イエリッチ(ブリュワーズ)、スティーブン・クワン(ガーディアンズ)、ケストン・ヒウラ(ブリュワーズ)、アイザイア・カイナーファレファ(ヤンキース)......誰もが打診段階では「喜んで出ます」と言っていたそうだ。そんななか、今大会のルール上、すべての条件をクリアしたのはヌートバーだけだった。栗山監督はこう言っていた。
「日本の選手を育てるためには機会を与えなきゃ、ということも考えた上で、本気で勝つつもりならそういう(日系の)選手を入れていいと思っています。日本の野球はグローバル化していかなければならないし、このWBCで日本と縁のある選手を巻き込むことで、野球を日本から世界へ広げていくことも僕の使命なのかなと思っていて......」
そんな時、栗山監督に一通のメールが届く。送り主は斎藤佑樹で、彼は1枚の写真を添付して栗山監督にメールをした。写っていたのは高校時代の斎藤、田中将大らに囲まれたひとりの少年だった。斎藤が選ばれた高校ジャパンのアメリカ遠征の際、チームメイトだった船橋悠(早実)がホームステイしていたのが9歳になろうかというヌートバーの家だった、と......栗山監督が続ける。
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