「ヤクルトから戦力外通告を受けた時点で現役ではない」 2018年最優秀中継ぎ投手の近藤一樹が明かした「引退宣言」をしない理由

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

近藤一樹インタビュー 前編

自らの去就について

オリックスでは先発、ヤクルトでは中継ぎとしてプレー。昨年12月、独立リーグ香川からの退団を発表したオリックスでは先発、ヤクルトでは中継ぎとしてプレー。昨年12月、独立リーグ香川からの退団を発表したこの記事に関連する写真を見る

【「現役を続けていこうという気持ちはあんまりないです」】

 2004年の近鉄バファローズ消滅時に所属した選手たちで構成されるLINEグループがある。昨年オフ、近藤一樹はかつてのチームメイトに向けて、自らの去就についてこんな投稿をした。

「このたび、香川オリーブガイナーズを辞めました。今後は何も決まっていません」

 これを受けて、昔の仲間たちからは「お疲れさま」「ご苦労さま」「ゆっくり休んでください」と返信がきた。決して「現役を引退します」とは書いていなかったけれど、仲間たちからのメッセージは「引退」を前提にした温かい言葉であふれていた。

(あぁ、みんなは「引退」だと捉えているんだな......)

 特に否定はしなかった。「みんながそう思うのならば、それでもいいや」。近藤の胸の内にはそんな思いがあったからだ。同時に、自分でも現役続行に対する思いが少しずつ薄れていくことを感じていた。それから数カ月が経過した今、本人が静かに口を開いた。

「今も身体は動かしているけど、ボールを使った練習はほとんどしていません。正直に言うと、現役を続けていこうという気持ちはあんまり残っていないです。もちろん、NPBから『どうなんだ?』という獲得の意思があれば気持ちも変わるかもしれないけど、オープン戦が始まったこの段階ではそれも難しいと思うので、選手としては『僕はもう無理かな』っていう感じですね」

 昨年オフの段階で、「今後の去就は未定」と報じられていた。心のなかでは「まだまだできるはずだ」と考えながらも、「このまま独立リーグでプレーしていても、何も変わらないだろう」という思いもあった。だからこそ、2年間所属した香川オリーブガイナーズを去ることを決めた。

「結果的に香川には2年間いました。でも、独立リーグならば、今の僕のレベルでも抑えることができる(2022年シーズン2勝6セーブ防御率0.00)。それぐらいの差は感じるんですけど、そういうところでもう1年現役を続けることに意味があるのかどうかと考えました。この間、上(NPB)からのオファーもないということは、それだけの評価なんだと思います。(39歳と)年齢的なこともあるし、やっぱりいろいろ考えないといけないのかなと思って決断しました」

 決断から2カ月以上が経過した。彼は今、どんな思いを抱えているのだろうか?

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