山川穂高「嫌な思いをたくさんした」5年前からの成長に自信。打倒・メジャーリーガーへ「足を上げて打つフォームは絶対に変えない」 (2ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke

 このシーズンの夏場にも、理想の打球方向について語っていた。それがプロ入り5年目の覚醒に少なからず結びついている、と。

「センター方向にホームランが入るのは理想的ですね。もちろん、レフトのほうが圧倒的に多いし、それは全然構わないんですけど、ただレフトを狙ってレフトに打ったのか、センター方向を狙ってたまたまボールを前で捉えたからレフトにいったのかは大きな違いなので。最近はセンター方向にいくようになって、振り遅れればライト、ちょっと早かったらレフトというバッテイングができ始めている。そうなってくるとフィールド全部を使えるので、ミスショットが減ります」

【風船トレーニングの意図】

 2018年から2年連続ホームラン王に輝いたあと、山川はバッティングの確率を上げようと打撃フォームの改造を行なった。2020年から左足の上げ幅を小さくし、打つポイントを体の近くにした。ところが思うようにいかず、2年続けて不振に陥ったあと、2022年から「前で打つ」に戻した。同年の2月中旬にはこう話している。

「以前はクセとして自然に前で打っていたので、たぶん打てていたんですよね。過去2年、ポイントを引きつけようとしたのは、打率を残しているバッターの俗に言う『ポイントが近い』という表現に見えたからです。それをやりつつ、ホームランも増やしていきたいという欲があって......。今は頭で、自分の体やバットがこうなったらダメだとわかっているので、あまり大きく間違えないだろうと思っています」

 その感覚どおりシーズンに入ると、山川は完全復活を果たした。

 過去2年間の不振を経て、山川は新たな感覚を手にしたのだろうか。その中身を紐解くうえで、先述した理想的な打球方向の話には続きがあった。「ボールを引きつけて打つことができるようになったから、センターから右方向にも打てるようになったのか?」と尋ねると、「違うんです」と即座に否定したのちにこう語っている。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る