名コーチ・伊勢孝夫は「侍ジャパン、世界一奪還のカギはスモールベースボール」「1次ラウンドにピークを持ってくるな」と力説

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Koike Yoshihiro

 WBC侍ジャパンの強化合宿が2月17日から始まる。メジャー組の参加はダルビッシュ有(パドレス)ひとりというなか、はたしてどんなキャンプになるのか。そこでヤクルト、巨人をはじめとする5球団で打撃コーチ、ヘッドコーチなどを歴任し、多くの選手を育てた伊勢孝夫氏に侍ジャパン強化合宿の見どころについて語ってもらった。

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【細かな野球の追求】

 急造チームとして約10日間の合宿は短いかもしれないが、大方の選手は昨年秋のオーストラリアとの強化試合で顔を合わせている。そういう意味で、監督の考えを理解している選手もいるだろうし、ゼロからのスタートではない

 さて、私がこの合宿でポイントと思っているのは、いかに細かなプレーの徹底がなされるかということだ。バントならセーフティバント、プッシュバント、さらにエンドランにスチール......。打撃にしても、ただフリーバッティングに時間を費やすのではなく、進塁打を意識して打てているか。いわゆる「スモールベースボール」であるが、これがひとつのテーマになるのではないだろうか。

「あの豪華な打線でなにがプッシュバントだ!」。そう思う人もいるに違いない。たしかに今回の侍ジャパンの打線は、各チームのクリーンナップを揃えたような打線だ。でもだからこそ、いざ本番となったら細かな攻撃が求められると思うのだ。

 国際大会は、過去の事例から見ても簡単に得点は望めない。僅差での展開が強いられ、1点が試合の流れを大きく左右する。ホームランバッターを揃えたとはいえ、初見の投手相手に長打を期待するのは厳しい。だからこそ、きめ細かな攻撃が必要となり、バントや進塁打が重要になってくる。

 1次ラウンドは、客観的に見て韓国以外は格下のチームだ。そうした相手に、豪快なホームランでの大量点より、機動力を駆使して2点、3点とったほうが、チームに安定感が生まれる。

 極端に言えば、ホームランは端から捨てたほうがいい。とくに準決勝、決勝で対戦するであろうアメリカや中南米の強豪国との対戦を想定した時、どうしても一発攻勢で勝てるとは思えない。ならば、1次ラウンドから細かな野球を貫き、準決勝以降に臨むべきであろう。

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