田中正義は新天地・日本ハムで輝けるか。人的補償が「野球人生の転機」となった5人の男たち (4ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Kyodo News

 そしてこの教訓が生かされたのは、3年後の日本ハムとの日本シリーズ。落合監督は完全試合目前の山井大介から岩瀬仁紀に代える非情とも言える采配で53年ぶりの日本一を達成。しかし、この"継投・完全試合"は物議を醸した。当時はさまざまな憶測が飛び交ったが、のちに落合監督は「継投策に出たのは、あの試合が遠因だった」と、2004年の西武との日本シリーズがきっかけだったと語っている。

 その岡本だが、2008年1月に和田一浩の人的補償で因縁の西武に移籍。47試合に登板し18ホールドを挙げるなど"中継ぎエース"として活躍。巨人との日本シリーズではアレックス・ラミレスにサヨナラ本塁打を浴びたが、4勝3敗で下し日本一を達成。チームをまたぎ2年連続日本一を味わった。

【広島初のリーグ3連覇に貢献】

 巨人時代の一岡竜司は、2年間で一軍登板わずか13試合の投手だったが、広島の編成部は最速151キロのストレートだけでなく、カットボール、スライダー、フォークなどの変化球も高く評価していた。大竹寛の人的補償での獲得が決まった時、かなり喜んだという。

 移籍1年目、一岡は31試合で16ホールド、防御率0.58と圧巻のピッチングを披露。オールスター出場も果たした。

 25年ぶりのリーグ制覇を果たした2016年は5ホールドに終わったが、翌年は59試合に登板して6勝19ホールド、さらにその翌年も59試合登板で5勝18ホールドと、チーム初のリーグ3連覇に貢献した。

*     *     *     *     *

 田中正義は創価大から2016年のドラフトで5球団による競合の末、ソフトバンクに入団。誰もが"未来のエース"と活躍を信じて疑わなかったが、昨年までの6年間の成績は34試合に登板して0勝1敗2ホールドと実力を発揮できずにいる。だが、ポテンシャルの高さは球界屈指。環境が変わったことで"覚醒"する可能性は大いにある。はたして、田中正義にどんなドラマが待っているのか大注目だ。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る