広澤克実が驚愕した「これぞ魔球」10選。「顔付近に来たボールが外角に決まるなんて...打てるわけない」 (4ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Koike Yoshihiro

【真横に曲がる川崎憲次郎のシュート】

 川崎憲次郎(ヤクルトなど)は1998年にシュートを覚えたことで、最多勝のタイトルを獲得し、投手にとって最高の栄誉である沢村賞にも輝いた。川崎のシュートの最大の魅力はストレートよりも速かったことだ。リベラのカットボールではないが、ストレートよりも速い変化球ほど厄介なボールはない。

 よくシュートはツーシームと同じように思われているが、厳密には違う。ツーシームはボールが1回転する間に、縫い目が二度見え、少し沈む。球の握りはほぼ同じだが、川崎のシュートは真横によく曲がった。現代のプロ野球はツーシームを投げる投手が増えているが、個人的にはシュートのほうが有効性は高いと思っている。

 川崎もシュートを覚えたことで、スタイルがガラッと変わった。奪三振は減ったが、その代わり内野ゴロが増え、自ずと球数も減った。シュートは川崎の野球人生を変えたボールだと言っても過言ではないだろう。

【遠藤一彦の超絶コントロール】

 私は1985年にプロ入りしたのだが、1年目にまず驚かされたのが大洋(現・横浜DeNA)の遠藤一彦さんのコントロールのよさだった。83年と84年に最多勝と最多奪三振のタイトルに輝いていた遠藤さんは、快速球と2種類のフォークを中心とした本格派と思われがちだが、むしろ制球力の高さで勝っていた投手だと思う。

 9イニングの平均与四球が2.00個以下だと「抜群のコントロール」と称されるのだが、たとえば86年の遠藤さんは233イニングを投げて、与えた四球は31個。この年の平均与四球率は1.20個だった。

 四球を出さないコントロールはもちろんだが、遠藤さんは打てないところにきっちりと投げ込んできた。だから、私にとってはすべてが魔球に感じていた。

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