広澤克実が驚愕した「これぞ魔球」10選。「顔付近に来たボールが外角に決まるなんて...打てるわけない」 (3ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Koike Yoshihiro

【川上憲伸の正真正銘のカットボール】

 カットボールの正式名称は「カット・ファストボール」という。つまり、ストレートのカテゴリーに入る。ヤンキースの名ストッパーだったマリアーノ・リベラは、ストレートとカットボールの球速差がほとんどなかった。これぞカットボールである。

 川上憲伸(中日など)はそのリベラのカットボールを手本に、自らのカットボールを編み出したと聞いた。私が現役だった頃、巨人でも阪神でも対戦しているが、川上のカットボールはリベラ同様、球速差がなかった。

 2002年にカットボールを武器に巨人戦でノーヒット・ノーランを達成したが、翌日の新聞には「高速スライダー」「カットボール」の表記が混在していた。そのことからも、日本ではまだカットボールが浸透していなかったことがわかる。まさに川上は、日本におけるカットボールのパイオニアだった。

【大魔神・佐々木主浩のフォーク】

 フォークと言えば、佐々木主浩(横浜など)だ。カウントを稼ぐ落差の小さいフォーク、そして空振りを奪う落差の大きいフォークを投げ分け、コントロールもよかった。

 打者からすればリリースポイントが高いほど"落差"を感じるもので、身長190センチの佐々木も有効性を存分に利用した。

 以前、佐々木と野茂英雄の対談記事を読んだことがある。ともに150キロを超すストレートとフォークを武器に、日米で活躍した投手だ。

 その際、佐々木が語っていたのは、ストレートもフォークも同じ腕の振りから投げるが、ボールの回転には気を遣っていたということだ。つまり、無回転になれば見極められる。そのため、ボールを挟みながら微妙にストレートと同じようにバックスピンをかけるというのだ。

 いかに打者にストレートと思わせるかがポイントになるということなのだが、その話を聞いた時に「これは打てないな」と思った。さすが日米通算381セーブを挙げた"大魔神"のフォークはモノが違った。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る