ヤクルト髙津臣吾監督に出てきた厳しさと落ち着き。OB八重樫幸雄が語った「恩師」野村克也との共通点と違い (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

名将・三原脩のような雰囲気が出てきた

――8月後半には横浜DeNAベイスターズの追い上げがあったものの、直接対決で3連勝しました。阪神タイガースとのCSでも3連勝して、日本シリーズ進出を決めています。「ここぞ」という場面での強さが目立ったように思いますが、この点はいかがですか?

八重樫 ワンチャンスをモノにする勝負強さは、間違いなく昨年よりも際立っていたと思います。監督よりも選手のほうが自信をつけていたんじゃないかな。きちんとチャンスを与えて、選手たちに「オレたちは勝てるんだ」という自信を植えつけさせたのは髙津監督の功績だと思いますね。

――2023年シーズンは球団史上初となる「リーグ3連覇」がかかっています。その可能性についてはどう考えますか?

八重樫 当然、今年よりも厳しいと思います。他の5球団が軒並みいいピッチャーを出してくるでしょうから。そのなかで、ヤクルトのピッチャーがどれだけ頑張ってくるか楽しみですね。あと、野手陣では山田哲人の復調が大前提。さらに、もう1、2人ぐらい若い選手が山田、村上宗隆を補佐するようになれば3連覇できると思います。大変だとは思いますけど。

――まだ、各チームの戦力補強は確定していませんが、セ・リーグ3連覇を目指すに当たって一番の強敵となるチームはどこだと思いますか?

八重樫 DeNAですかね。今年の後半の追い上げもすごかったけど、来季に新しい助っ人たちがヤクルトの外国人選手くらい機能したら、かなり強くなるはずです。今年も「ライバルはベイスターズかな?」と思っていたけど、来年はよりその思いが強いですね。あとは、どれだけジャイアンツが戦力補強をしてくるか。さすがに黙ってはいないはずですからね。

――髙津監督は来季、就任4年目を迎えます。今年の2連覇を受けて、さらにどっしりとした戦いができるのではないでしょうか?

八重樫 本人は「野村監督の教え子だ」と言っているけど、僕から見ると、三原脩監督のような落ち着いた名将の雰囲気を感じるんです。選手一人ひとりの能力を見極めるのが上手で、ノムさんよりも明らかに決断が速いように見えます。いずれにしても、ノムさんとか、三原さんとか、ヤクルトのいい流れをきちんと受け継いでいるのが嬉しいです。来シーズンもさらに応援したいと思います。

(105回:日本シリーズで「崖っぷち」だったオリックスに勢いが傾いた瞬間。両ベンチの「わずかな差」にも気づいていた>>)

【プロフィール】
八重樫幸雄(やえがし・ゆきお)

1951年6月15日、宮城県仙台市生まれ。仙台商1年時の1967年夏の甲子園に出場。1969年夏の甲子園では「4番・捕手」としてベスト8進出に貢献した。同年のドラフトでヤクルトから1位指名され、プロ入り。1984年に自己最多124試合18本塁打を記録。翌年には打率.304、13本塁打でベストナインにも輝いた。現役23年間で通算103本塁打、401打点。引退後は2軍監督、1軍打撃コーチを務め、2009年からスカウトに転身。2016年11月に退団するまでヤクルトひと筋だった。

【著者プロフィール】
長谷川晶一(はせがわ・しょういち)

1970年5月13日生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務を経て、2003年からノンフィクションライターとして、主に野球をテーマとして活動。2005年よりプロ野球12球団すべてのファンクラブに入会し続ける、世界でただひとりの「12球団ファンクラブ評論家(R)」。主な著書として、1992年、翌1993年の日本シリーズの死闘を描いた『詰むや、詰まざるや 森・西武vs野村・ヤクルトの2年間』(インプレス)、『プロ野球語辞典シリーズ』(誠文堂新光社)、『プロ野球ヒストリー大事典』(朝日新聞出版)。また、生前の野村克也氏の最晩年の肉声を記録した『弱い男』(星海社新書)の構成、『野村克也全語録』(プレジデント社)の解説も担当する。

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