礒部公一が苦手だった投手5人をランキング。ダルビッシュ有ら大エース、パ・リーグ時代は荒れ球で「ガンガン攻めてきた」投手も (3ページ目)

  • 栗田シメイ●取材・文・撮影 text by Kurita Shimei
  • photo by Sankei Visual

【★番外編】

・橋本武広(ダイエー→西武→阪神→ロッテ)、

・吉田修司(読売→ダイエー(ソフトバンク)、バファローズ)

 お2人ともタフィ(ローズ)や私のところで左のワンポイントリリーフで登板されていたんですが、1打席勝負だとほとんど打てなかったですね。いいように抑え込まれた印象です。共通しているのは抜群のコントロール。吉田さんはカーブとカットボール、橋本さんはスライダーと球種は決して多くないんですが、それがコースにバンバン決まるので厳しかった。左のワンポイントは左バッターにとっては鬼門ですが、特にコントロールがいい投手には苦労しました。中でも橋本さんと吉田さんは、アナウンスがあると「また来たか」と、強い苦手意識がありました。

【1位】下柳剛(ダイエー→日ハム→阪神→楽天)

 私の中では、下柳さんが圧倒的な一位です。左バッターにとって一番嫌なのは、インコースをグイグイ攻められることなんです。下柳さんはどちらかといえばシュートとスライダーが軸の投手でしたが、インサイドに来たボールがさらにシュートしてきた、かと思えば今度はアウトコースに逃げるスライダーを投げ込んでくる。左バッターはどうしてもインコースに残像が残るから踏み込めない。腰が逃げ腰になっちゃって、手打ちのようなスイングになってしまう。すごく苦手なタイプの投手でしたね。

 下柳さんは阪神時代の晩年のイメージから、コントロールがいい技巧派という印象を持っている方も多いと思いますが、パ・リーグにいらっしゃった頃はけっこう荒れ球でした。そういうタイプの左投手はインコースに投げることをためらうんですが、下柳さんは躊躇なくガンガン攻めてくる(笑)。試合前の練習でかなり投げ込んで試合でも投げる、というタフネスな方でしたが、そういったハートの強さがピッチングスタイルにも出ていました。

 下柳さんと対戦すると、どうしても踏み込めないからバッテイングの調子も狂わされた記憶があります。一試合を通してもそうだし、シーズンを通して考える方というか、とにかくもう下柳さんとの対戦はまともに打てた記憶がなくて、誰に聞かれても「下柳さんは一番苦手な投手でした」と迷いなく答えているくらいですよ。

【プロフィール】
礒部公一(いそべ・こういち)

1974年3月12日生まれ、広島県東広島市出身。三菱重工広島時代、1996年のドラフト会議で近鉄バファローズから3位指名を受け入団。2年目からレギュラーに定着して"いてまえ打線"の一角を担い、2001年には12年ぶりのリーグ優勝に貢献した。2003年から選手会長を努め、翌年の近鉄とオリックスの合併問題・球界再編問題の労使交渉に奔走。2005年に東北楽天ゴールデンイーグルスに創設メンバーとして加入し、初代選手会長に就任。2008年に引退するまで「ミスターイーグルス」としてチームを牽引した。引退後はコーチとして球団に残り2017年まで後進の育成に努めた。2018年からは解説者として活躍中。
現役時代の通算成績・・・1311試合出場、打率.281、1225安打、97本塁打、517打点

【ライタープロフィール】
栗田シメイ(くりた・しめい)

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。

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