オリックス逆転Vの立役者・阿部翔太が歩んだ波乱の野球人生。「もしキャッチャーのままだったら...」 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

28歳にして念願のプロ入り

 阿部が日本生命でプレーしたのは6年──右肩痛に悩まされたり、都市対抗の初戦で先発してノックアウトを喰らったり、プロを目指す心が折れかけたこともあった。それでも阿部が28歳になろうかという2020年の秋、バファローズがドラフト6位で指名する。すでに近鉄ではなくなっていたが、地元の京セラドームを本拠地とする、あのバファローズである。そして28歳の"オールドルーキー"はプロの世界へ飛び込んだ。

 しかしプロ1年目の昨年、チームはリーグ優勝を果たすも、阿部は一軍で4試合目の登板だった5月7日のマリーンズ戦で右肩を痛め、以降、一軍のマウンドで投げることはできなかった。

「去年のCS、日本シリーズはテレビで見ていました。正直、複雑な気持ちでしたね。僕が若い年齢で指名されていたらまた違う気持ちになったのかもしれませんが、28歳でプロ入りして、29歳になるシーズンからのスタートでしたから、正直、悔しい気持ちはありました。CSで戦ったマリーンズの中村奨吾や日本シリーズで対戦したスワローズの山田哲人は同学年ですし、『オレ、こんなところで何してんだ』という......だからこそ今年のCS、日本シリーズでは投げられる幸せを噛み締めたいと思っています」

 阪急、オリックスの流れから言えば、過去、バファローズはブレーブス、ブルーウェーブとして4度の日本一に輝いている。しかし近鉄の流れから考えるとバファローズは過去、一度も日本一になっていない。昨年の日本シリーズでもスワローズに敗れ、"バファローズとしての日本一"はあと一歩のところでまたもお預けとなった。

「近鉄ファンのひとりとして(笑)、当然、そのことは知っています。だからこそ今年、日本一になれば、近鉄ファンの方も喜んでくれるんじゃないかと思います」

 そのためにはCSでホークスを倒し、日本シリーズでヤクルトと戦うことになれば、同学年の山田に加えて、大事な場面であの"村神様"を抑えなければならない。

「僕は小細工できるピッチャーじゃないんで、メチャクチャ腕振って、気合いを入れて、全力で抑えにいくしかありません。勝負球はスプリットになると思うので、どうやって追い込むか......真っすぐをしっかり見せて、2球で追い込んだら、最後は3球勝負。うん、いいと思います」

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