五十嵐亮太が気になるセ・リーグの若手たち。中日の根尾昂は投手転向が「バッティングにも生かされるはず」 (2ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

根尾昂の投手転向について思うこと

――野手陣はいかがでしょうか。

五十嵐 筆頭はヤクルトの長岡秀樹選手です。過去2年間で11試合しか出場していなかったのに、コロナでの療養期間を除いてずっとレギュラーで出場を続けています。決して打率はよくないけど思いきりがいい(打率.239、7本塁打)し、何よりも凡打の内容がいい。野手の正面に飛んでアウトになったケースでも、しっかりと捉えられています。打席での立ち方を見ていても、非凡なものを感じますよ。

――バッターボックスの立ち方で、どんなことがわかるんですか?

五十嵐 立ち位置を見てほしいんですけど、長岡選手はホームベース寄りでラインぎりぎりのところに立っているんです。かつて、真中満さんもそうだったけど、あれは、よっぽどインコースのさばき方に自信があるバッターじゃないとできないですよ。上手に腕をたたんで、ライトポール際に大きな打球を打てる点も魅力的ですね。かなり技術があると思います。

――さて、ここからはシーズン途中に正式に「投手転向」となった中日・根尾昂投手について伺います。この選択、決断についてはどう思いますか?

五十嵐 驚きましたね。これまで、「投手から野手」というケースはしばしばあったけど、「野手から投手」というのは珍しいですから。打者としては、これまでかなりチャンスをもらっていましたし、今年の中日では岡林勇希選手の台頭もあった。このあたりで「投手に専念しよう」と考えるのは悪い決断ではないと、僕は思いますね。

――現在、中継ぎ投手としての登板が続いていて、19試合に登板して防御率4.19、1ホールド。五十嵐さんは彼のピッチングをどのように見ていますか?

五十嵐 今年の春のキャンプでは、投手としての調整はしていなかったはずなのに、いきなり中継ぎで起用されてきちんとストライクが入るということに、まず驚きました。普通は、かねてから準備をしていないとなかなかストライクを投げられないものなんですが、彼は150キロを超えるストレートも投げている。やっぱり、ポテンシャルは非凡なものがありますね。

――もちろん、まだまだ課題もあるでしょうし、これからさらに伸びていくものと思われますが、根尾投手の今後についてはどう考えていますか?

五十嵐 これから、投手としての体の使い方をどんどん覚えていくでしょう。「どうすればキレのあるストレートを投げられるのか?」「変化球の精度を上げるにはどうすればいいのか?」といった、細かくて微妙な体の使い方を学んでいくと思います。そして、それは彼にとって新たな効果も生み出す可能性もあります。

――「新たな効果」とは、具体的にはどんなことですか?

五十嵐 理想的なピッチングフォーム、自分の理想の感覚を掴むことが、バッティングにも生かされるんじゃないかと。そういったことは、ピッチャーだった選手がバッターをやる時によくあることですが、根尾選手のようにバッターからピッチャーになる場合でも、同じようなことがあると思います。昔、石井弘寿さんも同じようなことがありました。

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