真中満が選ぶ現役時代の "最恐ピッチャー5人" 。「『来たっ!』と思って振る。でも、バットの軌道はボールの下なんです」

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Kyodo News

真中満インタビュー
後編「現役時代の最恐ピッチャー」

1992年ドラフト3位でヤクルトスワローズに入団し、2008年の引退までに4回の日本一を経験した、真中満氏。現役時代はシュアな打撃と俊足を生かした走塁や守備でチームを引っ張った。そんな真中氏が対戦して嫌だった投手たちを挙げてもらった。(中編「セ・リーグ上位チーム戦力分析」)

現役時代の真中満氏。ヤクルトの日本一に貢献した現役時代の真中満氏。ヤクルトの日本一に貢献したこの記事に関連する写真を見る

藤川球児ーーわかっていても打てないストレート

ーーさて、後編は趣向を変えて、真中さんが現役時代に対戦したなかで「恐かったピッチャー」、つまり「最恐ピッチャー」を5名挙げていただきたいと思います。まずは、どんなピッチャーが思い浮かびますか?

真中 ストレートに絞ったら、間違いなく藤川球児(元阪神など)ですね。

ーー何の迷いもなく出てきましたね(笑)。その理由を教えてください。

真中 スピードの速いピッチャーは何人もいましたよ。大魔神・佐々木主浩さん(元横浜など)も、マーク・クルーン(元巨人など)もすごく速いボールを投げていました。でも、藤川球児ほどホップするボールは誰も投げられないです。「来たっ!」と思ってバットを振る。でも、バットの軌道はボールの下なんです。物理的にボールはホップしないのはわかっているけど、「ホップした」と思わせる。そんなストレートを投げるのは藤川だけでしたね。

ーー「ボールの下を振ってしまう」対策として、「少し上を振ろう」とか、他のピッチャーとはスイングの軌道を変えたりするんですか?

真中
 彼の場合はすごく器用なんですよ。「球持ちがいい」というのか、間を取る、間をズラすのが上手なんです。投球動作に入りますよね。で、足をパッとおろす時と、なかなかおろさずにワンテンポずらす時と使い分けているんです。それでバッターは体勢を崩される。どうしても球速に目が行きがちだけど、実は「器用なピッチャー」という印象なんですよ、藤川の場合は。

ーー先ほど名前の出た佐々木投手、クルーン投手とはまた球質が異なるストレートということですか?

真中 クルーンの場合はスライダーもよかった。佐々木さんの場合はもちろんフォークボールもすごかった。でも、藤川球児の場合は8割、いや9割はストレートなんです。ストレートだとわかっていても空振りする。そういう意味では、「ストレート最恐ピッチャーは藤川球児」だと言っていいでしょうね。

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