「10分で球速10キロアップ」「イップスを1時間で改善」...SNSやYouTubeに躍る華美な謳い文句は本当か?

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Koike Yoshiyuki

【短期連載】令和の投手育成論 第13回

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「10分の施術で球速が10キロ上がった」
「イップスを1時間で改善できた」

 そんな"華美"な文言を、昨年からツイッターでよく目にするようになった。YouTubeの動画に飛ぶと、大学生が指先を施術された直後の投球練習で、たしかに10キロ速くなっている。

 にわかには信じ難いが、スポーツビジネスをしている知人が訪れると「脇の下をぐりぐりされた」だけで球速が90キロから110キロにアップしたと言う。文武両道で名を馳せる県立高校の野球部部長は弟子入りし、その影響で監督も指導を仰ぐようになったそうだ。

巨人2位指名の山田龍聖もアマチュア時代に北川雄介氏から指導を受けたひとりだ巨人2位指名の山田龍聖もアマチュア時代に北川雄介氏から指導を受けたひとりだこの記事に関連する写真を見る

感覚の可視化

「口コミで来てくれる人が多いですね。今、プロ野球選手は30人くらい来ています」

 そう語るのは東京・四谷で『DIMENSIONING』というジムを運営し、トレーナーとしてパフォーマンスアップ指導を行なっている北川雄介だ。ダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)世代で、高校まで自身も野球少年だった。

「八千代松陰高校の1学年上にソフトバンクに行った大場翔太さんがいて、何が違うのかなと見ていました。筋力があっても球が遅い選手もいるし、身体が小さいのに速く走る人もいますよね。自分は体が小さかったので、小学生くらいの時から体の使い方を自分で研究しないと絶対無理だという感じがありましたね」

 北川はSNSやYouTubeで名を広め、今や多くのプロ野球選手からドラフト候補まで外部指導している。昨年にはJR東日本時代の山田龍聖を1年間じっくり見て、巨人にドラフト2位で指名された。

 中学生の頃にトレーナーを志し、大学時代に母校(八千代松陰)で指導を始めたと言う。

「自分でスピードガンを買って、指導したことが球速や試合結果にどう影響しているかを検証し続けてきました。今もラプソードなどで計測しながらやっていますし、そういうことを少なくとも10年以上やっています。感覚的によくなったと思ったとしても、自分が指導したことで本当によくなったのか。"真実"に向き合わなければ説得力がないと思ってやってきました」

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