松井秀喜は「天敵」を攻略。元巨人スコアラーが明かす名選手たちへの助言と「投手の癖が一番出やすいポイント」 (5ページ目)
――データに対してあまり興味がないタイプだったという清原和博さんとは、どのようなやりとりがありましたか?
「キヨは、自分のオーラで投手に真っ直ぐを放らせますからね(笑)。ストレートにはめっぽう強かったです。巨人に移籍してきた頃(1997年)は確かにデータに興味がなかったのですが、ミーティングで『1球目のフォークは見逃すけど、2球続くと必ず振って空振りするよ。だから続けられるんだ』『インコース狙いの時は右足、アウトコース狙いだと左足から打席に入るだろう? 古田(敦也)にバレているからな』と伝えると、徐々に聞く耳を持ってくれるようになって。対戦相手の情報や、攻め方などを聞いてくることも増えました」
――清原さんに対する他チームの攻め方を、どのように分析されていましたか?
「清原にとって、ヤクルトの古田、阪神の矢野(燿大/当時は輝弘)は因縁のキャッチャーでした。彼らは、キャッチャーミットが清原の体で隠れて見えないくらい内角ギリギリのコースを突いてくるので、死球も多かったですしね。矢野の内角攻めに対して感情を露わにしたこともありましたし、インコースの直球を狙って本塁打を放ったこともありました。
キャッチャーでいうと、シゲ(谷繁元信)は考えていることが読めなかったので嫌でしたね。ほとんどのキャッチャーは攻め方の予想がつくのですけど、シゲはその逆を突いてくる。特に中日時代、川上(憲伸)をリードする時にはその傾向が顕著で、首脳陣に『いつになったら打てるんだ!』と怒られたこともありました」
――1年目の高橋由伸さんも、大学時代からのライバルだった川上さんに苦しんでいました。何かアドバイスをしましたか?
「川上を含め、あまり特定の投手に対してのアドバイスをしたことはなかったですよ。ただ覚えているのは、彼がルーキーだった1998年の夏頃、『もう少し打球の飛距離を飛ばしたい』と相談されたことがありました。私は高橋を『本塁打を量産できる選手だ』と思っていたので、『もっとバックスクリーンに向けて打球を運ぶようなスイングをしたほうが、結果として飛距離も伸ばせるんじゃないか』と伝えました。それが彼に合っていたみたいで、そこから長打も増えていきました。高橋とのいい関係を築くきっかけになった出来事でしたね」
(中編:WBC決勝、イチローから「どうします?」と聞かれて答えた狙い球>>)
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