松井秀喜は「天敵」を攻略。元巨人スコアラーが明かす名選手たちへの助言と「投手の癖が一番出やすいポイント」 (4ページ目)

  • 白鳥純一●文 text by Shiratori Junichi

――癖がわかれば、苦手な投手をすぐに攻略できるのでしょうか?

「必ずしもそうではないです。例えば、巨人が大の苦手にしていたヤクルトの(テリー・)ブロスは、事前に癖を見つけたはずが、試合前にブロスの投球練習を何気なく見ていると、その癖が直っていたんです。しかも、この日の試合ではノーヒットノーラン(1995年9月9日・東京ドーム)をやられてしまい......ガックリと肩を落としましたよ。

 ヤクルトに関しては、1995年にトレードで加入した吉井(理人)のフォークにも巨人打線は苦しめられていました。だから私が吉井の癖を見つけた時は、松井(秀喜)なども大喜びしていましたよ」

――松井さんといえば、阪神の遠山奬志さんのボールをまったく打てないシーズン(1999年は13打数0安打)がありました。どのような対策を立てましたか?

「松井の打撃フォームは、投手に対して平行に足を踏み出す『スクエアステップ』で、いわば王道なフォームなのですが、対する左腕の遠山は、左打者の背中側から角度のあるボールを投げてくる。なので、松井がそのまま打ちに行くと、どうしても体が開いてしまい、外角の真っ直ぐとスライダーにタイミングが合わなくなっていました。

 翌2000年の春先には、松井が『何をやってもまったく打てない』という大スランプに陥りました。早朝から特打をやっても、オープン戦で結果が残せない。困り果てていた松井が『何かいい方法はないですか?』と私のところにやってきたので、当時のメジャーリーグで流行していた『クロスステップ』を薦めたんですよ。

 踏み込む投手側の足をやや内側にして、腰を切るような打撃フォームです。そのフォームだとバットが少し遅れて出てくるようになって"間"ができるようになり、外角のボールにも対応できるようになった。松井も『ボールが見えるようになった』と乗り気になってくれて、徐々に調子が上向いていったんです。遠山のボールにもタイミングが合うようになって、本塁打も打ちましたし、対戦成績も改善していきました(2000年は10打数3安打1本塁打)」

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