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鈴木誠也は年俸3億円から4年70億円に爆上がり。なぜメジャーに移籍すると、これほど価値は高まるのか? (4ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

【日本球界にはびこるFAの偏見】

 一方、野手のサンプル数は投手と比べて少ない。「日本人野手はメジャーでは難しい」というレッテルを貼られることもあるが、鈴木の場合、そうしたマイナスの見方を覆す材料があると長谷川氏は言う。

「どんな野手でも絶対に欠点はありますが、その穴が非常に少ないのが鈴木選手。欠点をつけようがない。要は、アメリカでは多くのホームランを期待されるわけではありません。

 日本では30〜40本塁打を打つパワーがありますが、アメリカで期待されるのは、ホームランは15本でいいから塁に出て、守って走ること。いわゆる1番打者タイプです。過去には苦労した日本人野手もいますが、そうしたことを持ち出されないくらい能力がずば抜けています」

 つまり、個人能力と環境要因の両面から、鈴木はビッグディールを見込まれているのだ。

 あらためてMLBとNPBを比べると、さまざまな事情が絡み合い、市場規模が大きく異なっている。前者は1兆円を超えるのに対し、後者は1500億〜2000億円程度。1994年時点では同程度だったが、現状では大きな差が開いた。

 同じ選手でも、市場規模の差により評価額が大きく異なる。そうした違いが生まれる理由について、日米の球界を熟知する長谷川氏はふたつの理由を指摘する。

 ひとつは、球団数の違いによるものだ。

「MLBは30球団の需要と供給によって市場がつくられますが、NPBは12球団しかなく、FAになった選手をなかなか獲りにいかないチームもあります。選手がFAを宣言しないといけないというハードルもありますし、自然原理として需要をつくりようがありません」

 もうひとつは、いわゆる"偏見"だ。長谷川氏が続ける。

「英語で言えば、『フリーエージェント』も『自由契約』も一緒です。ともに『FA』で、『この選手はFAになった』という言い方をします。そうしてメジャーでは市場ができる一方、日本では『戦力外』というレッテルを貼る。時には『素行に問題があったんじゃないか』と言われることもあります。

 今オフ、日本ハムではノンテンダーという特殊な事情がありましたが、FA権を取得した選手と戦力外になった選手を同じ『自由契約』という目で見れば、日本にももう少し市場ができる気がします」

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