世界を驚かせた二刀流、大スターの引退、前代未聞の不祥事...2021野球界「10大ニュース」 (10ページ目)

  • 紙井昇●文 text by Kamii Noboru
  • photo by Taguchi yukihito,JMPA,Koike Yoshihiro,Ohtomo Yoshiyuki,KyodoNews

21年ぶり3度目の優勝を飾った智辯和歌山ナイン21年ぶり3度目の優勝を飾った智辯和歌山ナインこの記事に関連する写真を見る智辯和歌山「イチローさん、ちゃんとやりました!」の全国制覇

 2020年はコロナ禍により、春夏とも中止となった甲子園大会。今年は綿密な感染対策のもと、春夏とも高校球児の晴れ舞台が用意された。

 デルタ株が猛威を奮うなど、感染状況が春に比べて悪化した夏は、センバツ優勝の東海大相模をはじめ、複数のチームが、新型コロナ感染が原因で地方大会出場辞退を余儀なくされた。一般観客の入場は見送られたものの、夏の甲子園は予定どおり開催。

 だが、史上最多となる6度の雨天順延による大会日程の大幅な変更、春は1チームも出なかった、大会出場校内でのコロナ感染による不戦敗が2例出るなど、前例のない事態に直面するなか、大会が進んでいった。

 激動の大会を制したのは、智辯和歌山。元プロである指揮官の中谷仁のもと、充実の投手陣による継投でのゲームメイク、伝統の猛打で栄冠を掴んだ。

 智辯和歌山の躍進とともにクローズアップされたのが、2020年12月に同校を訪れたイチロー氏の存在だ。同年2月に、プロ野球経験者が学生野球の選手を指導する際に必要な「学生野球資格回復制度」の認定を受けたイチロー氏が、初めて指導した高校が、智辯和歌山だった。実演を交えながら3日間みっちりと指導し、最終日には「ずっと見ているから、ちゃんとやってよ!」と、選手たちを激励した。

 この言葉を受けて、メディア向けに提出する大会アンケートの「好きな言葉」に、複数の選手が「ちゃんとやってよ」と記入するなど、"イチローイズム"がチームに浸透。プレー面でも、指導された頭脳的な走塁を和歌山大会決勝で敢行し、DeNAからドラフト1位指名を受けた、市和歌山高の本格派右腕・小園健太を攻略した。

 その後、イチロー氏は今年の11月末に國學院久我山高、12月初旬に千葉明徳高を指導。さらに12月中旬には、甲子園で智辯和歌山高に敗れた後の会見で、監督が「ウチにも来てほしい」とラブコールを送った高松商高に訪問。今後の訪問先にも注目が集まっている。

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