ビッグボス、名コーチも惚れ込む打撃センス。「令和のイチロー」と称された元巨人・山下航汰に吉報は届くか (3ページ目)

  • 菊地高広●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Murakami Shogo

【トライアウト最終打席で意地のヒット】

「うまくとらえた打席もあったんですけど、正面を突くような打球が2本くらいあったので。それはちょっと惜しかったというか、もったいなかったです」

 トライアウト終了後、山下はそう語っている。それでも、あとがないはずの最終打席、山下の感覚は極限まで研ぎ澄まされていた。

 小川龍也(前・西武)と対戦した最終打席。通算187試合登板の実績がある左サイドハンドが投じる、ストライクからボールゾーンへと変化するスライダーに山下のバットがピタッと止まる。明らかに小川の球筋を見切ったボール球が続く。最後はアウトコースの難しい球を逆らわずに三遊間へと運び、ヒットにしてみせた。

 最終打席で見せたこのヒットこそ、山下航汰という野球選手のしぶとさ、逆境での強さを象徴しているように思えてならない。報道陣から「アピールしたいところは出せましたか?」と聞かれた山下は、「はい、出せたと思います」と力強く答えている。

 今後については、「もう待つことしかできない」と言いきった21歳。果たして"ビッグボス"や名打撃コーチが認めた才能は、どこへ向かうのだろうか。

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