コンニャク投法サウスポー佐藤政夫は「現役ドラフト」で巨人から放出 (2ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

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 小学3年生のときにテレビで見た長嶋茂雄の引退試合とセレモニー。僕は大変な衝撃を受けてプロ野球に惹き込まれたのだが、最後に対戦した投手のことは何も知らなかった。慌てて挨拶をすると佐藤さんはサッと頭を下げ、縁の薄い眼鏡の奥の目が合ったのはほんの一瞬、はにかむような微笑もすぐに消えた。

 ノーネクタイで黒のスーツを着こなし、後ろに撫でつけた髪がまばらに立って、実年齢(当時64歳)を感じさせない風貌も深く印象に残った。子どもたちも数多くいてにぎやかな会も中盤に差し掛かった頃、奥の壇上に3校出身のプロ全員が並び立ち、マイクを持ったS君が一人ずつプロフィールを紹介していった。もちろん佐藤さんも並んでいた。

「佐藤政夫さんです。東北高校から社会人の電電東北、プロは巨人、ロッテ、中日、大洋(現・DeNA)、それでまたロッテでしたっけ? アメリカにも行ってるんですよね」

 移籍を繰り返し、渡米までしている球歴に僕は興味津々となった。後日、S君を通じて取材をお願いしたが、掲載誌の都合で取材は4ヵ月後となった。その間、参考までに、過去の野球人インタビューを収録した自著を郵送していたのだが、5月、新横浜駅構内のカフェで再会したとき、佐藤さんは席に着くなりその一冊をテーブルに置いて言った。

「ここに出てる12人? すっごい人ばっかりじゃないですか。私なんて全然すごくないし、活躍してないです。だから別の企画でやったほうがいいよ、と思ってたんだよね」

 宮城生まれで東北弁のアクセントに温かみがありながら、スピード感十分な口調。たしかに、佐藤さんの通算成績は実働16年間で14勝27敗8セーブだが、僕は数字を積み上げた野球人だけに会ってきたわけではなく、通算5勝12敗の投手にも取材している。その例を出そうとすると佐藤さんは言った。

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