飯田哲也の引退に「もったいない」と八重樫幸雄が思った理由。「あと4~5年は現役を続けられた」
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【高校時代からのライバルだった飯田哲也と土橋勝征】
――今回も、野村ヤクルト黄金時代のリードオフマン・飯田哲也さんについて伺います。
八重樫 前回のラストでも話したけど、1986(昭和61)年のドラフト4位が飯田で、同じ年のドラフト2位が土橋(勝征)でした。飯田は千葉県の拓大紅陵高校出身で、土橋は千葉の印旛高校卒業。同じ年齢で、同じ千葉県からの高卒ルーキーだったんですよ。
天性の素質と明るさで黄金期のヤクルトを支えた飯田哲也この記事に関連する写真を見る――高校時代から拓大紅陵と印旛は激戦を繰り広げていたようですね。高校3年夏の千葉県大会決勝戦で両校は激突。飯田さんの拓大紅陵が甲子園出場を決めています。
八重樫 高校時代からお互いを意識していたかどうかはわからないけど、プロ入り後はお互いのことを意識していたと思いますよ。彼らがヤクルト入りした当時、僕はまだ現役で一軍にいたから、入団直後に彼らが二軍にいた頃のことは詳しくは知らないけど、それでも2人の話題は耳に入っていましたからね。
――この連載の「土橋さん編」では、「今度の新人はとことん練習するらしいぞ」と土橋さんの評判を耳にしていたと聞きました。飯田さんについてはどうだったんですか?
八重樫 飯田に関しては「足がものすごく速くて身体能力に優れた選手だ」という話はチラホラ聞いてはいましたね。高校時代、彼はキャッチャーだったから、「自分と同じポジションの新人だ」と危機感を抱くまでではなかったけど、「どんなキャッチャーなんだろう?」と思っていた気がします。
――さて、八重樫さんは「飯田と土橋は対照的な性格だ」とおっしゃっていました。詳しく教えていただけますか?
八重樫 土橋はコツコツ、コツコツ練習する超努力型。周りが「もういい加減にしろよ」というぐらい練習をするタイプ。早出練習の、さらに早出でバッティングも、守備も上達していったタイプです。一方の飯田は、何から何まで天性でソツなくこなせるタイプ。決して「練習嫌い」とは言わないけど、練習しなくてもできちゃうから、必死になって練習する必要がない。近くに土橋がいるからなおさら、飯田は練習していないように見えちゃうんですよ(笑)。
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