「頭のどこかで将来は医者を目指すだろうと...」そう思い続けていた元プロ野球選手・寺田光輝の壮絶半生 (5ページ目)

  • 村瀬秀信●文 text by Murase Hidenobu
  • photo by Sportiva

寺田 独立リーグや選手を悪く言うつもりはまったくないんですけど、NPBへの道が開ける一方で、野球選手の墓場みたいなイメージもありました。とくに僕の場合は地元の大学を中退して、編入して、決まっていた地元企業への就職も蹴ってプロ野球を目指したのに、NPB選手になれずに終わってしまったら、自分の思いとしては負け犬のまま終わってしまう。地元に帰って笑いものになるのは嫌だなって。でも一方で、ここでダメなら、完全に野球をあきらめられる。もう絶対に結果を残さなければいけない。そのために投げ方もサイドスローに変えたんです。

石川 なるほど、どこまで行けるのか。自分自身に対するトライアウトという位置づけでもあったのですね。でもその独立での2年間でリリーフとして結果を残して2017年のドラフト会議で横浜DeNAベイスターズから6巡目の指名を受けます。これは相当うれしかったんじゃないでしょうか。

寺田 うれしかったですね。うれしかったですけど、最初はビックリしたほうが強くて......育成(ドラフト)でかかれば御の字ぐらいのつもりで待っていたので。

石川 ドラフトで寺田さんが指名されて驚いている映像は有名になりましたからね(笑)。でも念願のプロ野球の世界はどうでしたか。

寺田 全然レベルが違いましたね。当時はストレートとスライダーには自信があったんですけど、DeNAに入団してすぐの合同新人自主トレで、ドラフト1位の東克樹(立命館大)とか、周りの同期の球を見て自信があっという間に吹き飛んだというか、ヤバいところに来てしまった......です(笑)。

石川 打撃コーチとして巨人や広島などで活躍された内田順三さんは「プロは全員最初に挫折する。そこからどうするか」だとおっしゃっていましたが、寺田さんは、絶望したあと、どう自分を奮い立たせていったのですか?

寺田 まず「自分はなぜプロに指名された」のかをもう一度考えて、自信のある長所を伸ばそうとしました。あとは実戦での手応えを見ながら......と思ったんですけど、ここからある意味でケガとの戦いになってしまったプロ生活がはじまるんですね。

石川 なるほど。ではプロの世界におけるケガとの戦いと、医学部への歩みについては次回に聞かせていただければと思います。

後編へつづく

 ヤングジャンプの人気マンガ
『ドクターゼロス〜スポーツ外科医・野並社の情熱〜』の
コミックス第1巻が11月19日に発売。
それを記念し、1話から3話までを特別公開!
第1話はこちらから>>
第2話はこちらから>>
第3話はこちらから>>

<あらすじ>
怪我を機に現役を引退した元プロ野球選手・野並社は、スポーツドクターへと転身。そんな彼の元に集まるのは、様々な事情で競技人生の岐路に立たされたアスリート達だった。選手の“夢”を治すために、野並の診察が始まる──。<週刊ヤングジャンプにて連載中>

コミックスの購入はこちらから>>

5 / 5

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る