今シーズンまだ4勝だけど...「さすが田中将大」と納得させられる圧巻の数字 (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Kyodo News

 とりわけ有効なのが、高めの球の活用だ。

 高めの球というと、日本では空振りを奪うための誘い球や低めへの布石として用いられることが多く、ストライクゾーンで勝負するというイメージは少ない。それが田中の場合、その高めにストレートのみならず、スライダー、カットボール、ツーシームと変化球も使いながら勝負しているのだ。

 これは田中がニューヨーク・ヤンキースで培った観察眼、データを駆使して磨き上げた技である。その技術を日本でも存分に生かしていると言える。田中を入団1年目から知る小山伸一郎コーチは次のように語る。

「近年、日本にも"フライボール革命"が入ってきたことで、低めのボールをすくい上げるために下からスイングするバッターが増えました。困った時はアウトコースだったり、低めの球だったり、もちろんそういう意識は大事なんですけど、それだけじゃなくてベルトよりもちょっと高めにフォーシームを投げて、ポップフライを打たせるといったピッチングも必要になってきます。そういう意味で、田中はアメリカでやってきたことを、日本でもうまく出せていると思います」

 田中の安定感を支えているのはこれだけではない。その日のコンディションや投球メカニズムを考え、試合中であってもプレートに据える足の位置を変えたり、変化球のスピードに強弱をつけたりするなど、修正能力の高さも小山は称える。

 それはメジャーでの7年間を含むプロ15年の豊富な経験によるところが大きいが、「責任感」というメンタリティーも欠かすことのできないバックボーンである。

 ここまで先発投手として17試合に登板している田中だが、一度もイニング途中でマウンドを降りていない。チームが求める最低限の仕事を実践している証である。投げきることへのこだわり......それを強めるひとつのきっかけがあった。

 ヤンキース時代の2018年7月16日、クリーブランド・インディアンス戦。2点を奪われながらも要所は締めていたが、7回一死からランナーを許したところで交代を命じられた。この時点で球数はわずか77球だった。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る