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ヤクルト17年目で初のゴールデングラブ。角富士夫はどれだけ新外国人が加入しても腐らなかった (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Kyodo News

【次々とライバル助っ人が入団しても決して腐らなかった】

――角さんといえば、シュアなバッティングと堅実な守備を誇りながらも、ボブ・ホーナー、ダグ・デシンセイ、ジャック・ハウエルなど、いつも外国人選手にポジションを奪われていた印象が強いです。1988年には長嶋一茂選手まで入団してきましたからね。

八重樫 キャッチャーからすると、サードに角がいると安心なんです。彼の守備はとても安定していましたから。でも、せっかくレギュラーを獲りかけても、球団は毎年のようにサードに新外国人を獲得するわけです。個人的には「角でいいじゃないかよ」って思っていたけどね(笑)。それでも、彼は現役晩年まで決して腐らなかったでしょう。与えられたチャンスを必ず生かして、長く現役を続けたのは立派だと思います。

――野村克也監督時代の1994(平成6)年まで20年間も現役を続けましたし、プロ17年目にして初のタイトルであるゴールデングラブ賞を獲得したのもすごいことですよね。

八重樫 そういう内面の強さこそ、九州男児らしかったと思いますよ。代打でも、守備固めでも、黙々とこなしていたでしょ。僕としては広岡さんの時代からずっとチームメイトだったから、「かわいそうだな」という思いもあったけど、本人はまったくふて腐れるそぶりなんか見せなかったですよ。

―― 一緒に食事をした時など、球団に対する不満や愚痴なんかをこぼしたりはしなかったんですか?

八重樫 遠征先ではよく食事にも行きましたけど、酒場でも普段と同じように物静かです。そんなにお酒も強くないから、ビール一杯で真っ赤になっていたけど、楽しそうにしていましたよ。決して愚痴なんか言わないし、聞いたこともないな。以前も話したけど、船田さんがひとりで盛り上げて、無口な若松(勉)さんと、同じく無口な僕と角が船田さんの話を聞いている。それでも、なぜかみんな楽しいという飲み会がよくありましたね。

――楽しそうな光景が目に浮かびます。ぜひ、次回も角さんとのエピソードを聞かせてください。

八重樫 そうだ。「やっぱり角は九州の男だな」って感じたプレーがあったんだ。次回はそのプレーについてお話ししましょうか。

(第75回につづく)

ヤクルトの美しきチアリーダーたち

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