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「絶対にごまかしは利かなくなる」イップスを経験した荒木雅博が悩む選手へ伝えたいこと (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

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「守備では、上(上半身)についてはほとんど言いません。下(下半身)は『ステップをこうすると、もっと楽に投げられるよ』と話しますけど、上は自分の投げやすいように投げること。よっぽどケガしそうな投げ方じゃない限り、触ってはいけないと考えています」

 もうひとつは、受け取る選手の考え方にもポイントがあると荒木は言う。

「言われたことをすべて実行しようと思わないで、自分に合わないと思ったら受け流すくらいの考え方でいいと思います。人間なんか同時に2つのことを考えられないですから、なるべくシンプルに物事を進めていかないとね」

 イップスを発症した経験者に話を聞くと、真面目な性格の持ち主であることが多い。周囲に言われたことを忠実に守ろうとして、完璧を求め、ミスを恐れる。そんな悪循環にはまっていくケースをよく耳にする。

 荒木はコーチになって今季で3年目を迎えたが、ミスを犯すことよりも大事なことをチームに伝え続けている。

 たとえば、2019年の中日はセ・リーグ最小タイの45失策、チーム守備率はセ・リーグ新記録の.992をマークしていた。一見、完璧な結果に見えるが、荒木には不満があった。2019年のシーズン後、こんなもどかしい心中を語っていた。

「無難すぎて、物足りなく感じることも多かったです。全体的にポジショニングが前寄りで、ヒットゾーンが広く感じていました」

 打ち取ったように見えた当たりでも、ポジショニングの浅い内野陣の間を抜けていく。エラー数は少なくても、ヒット数が増えては仕方がない。2019年シーズン後に二軍コーチから一軍コーチに昇格した荒木は、前任者の奈良原浩(現・楽天一軍内野守備・走塁コーチ)と会話したうえで、意識改革を進めた。

「基礎をつくってくださった奈良原さんにしても、志半ばだと思ったんです。そこでオフのパーティーで会った奈良原さんに『もうひとつ先がありますよね?』とお聞きしたら、『おう、あるよ』というお返事をいただいて。その先を自分がやろうと決めたんです」

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