パンチパーマより鉄砲肩と堅守が強烈。ルーキー矢野雅哉が広島に欠かせないワケ (2ページ目)
バッティングはお世辞にもいいとは言えないが、それでも気がついたら塁に出て、バッテリーにプレッシャーをかけ、ダイヤモンドを駆け回る。相手にしてみたら、こんな手の焼ける選手もいなかったはずだ。
肩についても、亜細亜大グラウンドのセンター120mのバックスクリーンに、ホームベースから投げてノーバウンドで?当てたという逸話があるが、実戦で見てきた矢野の強肩はじつに理にかなったものだった。
ひと言で言うと、決して力任せのスローイングをしない。三遊間の深い位置からでも、フットワークを使って安定した球筋のボールを放って、打者走者を刺していた。それを可能にしていたのは、捕球姿勢が安定して低いからだ。立ち腰にならず、スローイングに転じても頭の位置が変わらない。こういう一連の動作をしてくれたら、一塁手は安心して送球を待てる。
昨年の"東都"では、国学院大の小川龍成(ロッテ3位指名)もなかなかエラーをしないショートだったが、捕球から送球の安定感では矢野も負けていなかった。
「普段はキャプテン風を吹かすわけでもなく、明るく元気な人ですけど、野球になると黙々と率先垂範するタイプ。結果で見せたる......みたいな、根っからの関西人ですね」
そんな寸評がチームメイトから聞こえてきた。
春季キャンプ序盤は、人のうしろにまわって存在感が薄かったそうだが、會澤翼の「プロは目立ってナンボやぞ!」のゲキから徐々に変わり始めたと聞く。
"パンチパーマ"の話題ばかり広まってしまったが、それよりもオープン戦に出場した13試合を無失策で乗り切ったからこその「開幕一軍」だったことを、本人はもっと取り上げてほしかったのではないだろうか。
各地を転戦しながら試合のたびに球場が変わるオープン戦での"守備率10割"は、ルーキー内野手にとっては誇れる数字だ。
阪神・佐藤輝明のような派手さはないが、反復練習によって築かれた技術と叩き上げのド根性で獲得した一軍のイスは、なにがなんでも死守すべきである。今の広島も、そうした"たくましい選手"を必要としているはずだ。
矢野のように、チームの隙間を埋めてくれる選手がいるチームは強い。これから広島の戦いは大注目である。
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