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「うまくパフォーマンスが出せない」
不安な松井裕樹に田中将大が授けた金言 (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Koike Yoshihiro

 松井の場合、そういう日は原因究明に思考を巡らせることが多い。極端に言えば、自分を追い込んでしまうのだ。そういった状況下での張り詰めた糸を弛緩させてくれたのが、田中の言葉だった。

「悩んだ期間がシーズンの助けになる。今のうちに悩むのは、むしろいいことだから」

 松井がさらに助言を求める。

「感覚もまだうまくパフォーマンスに出せないんで。そこも不安になります」

 田中が後輩の悩みを包み込むように諭す。

「今までだって、シーズンに入ってから『感覚がわからない』ことなんてないでしょ。そういうのは時間が解決してくれることもあるから、今は苦しむ時期だと思って。ミスをしたら、それを引き出しとしてつくればいいじゃん。そうすれば、シーズンで同じようなミスをしなくなる。だから『いい球が投げられない』からって、あんまりマイナスに考えすぎないほうがいいよ」

 不安が楽しみに変わる。松井の声が、自然と軽やかになる。

「悩むことに対して前向きになれましたね。感覚がよくなかったとしても楽な気持ちで練習できるんで。ありがたいです」

 それは、松井が昨季の経験から拓きつつあった境地でもあった。

 2019年に38セーブを挙げ初のタイトルに輝いた楽天の絶対守護神は、昨季、本格的に先発へと転向した。

 10試合で3勝3敗、防御率3.66。これが、先発としての成績である。ポジションの違いこそあれ、松井の守護神時代の実績を考慮すれば、物足りない数字である。振り返れば、開幕ローテーションとしてシーズンをスタートさせながら、たった2試合の登板でファームでの調整を余儀なくされた。松井自身、原因はわかっていた。

 大きなところで言えば、投球フォームだ。昨年、松井は2018年に続きノーワインドアップに挑戦したが、これがハマらなかった。そして、守護神時代はフルスロットルで投げ続けていたため、先発としての力配分をなかなか掴み切れなかったことも挙げられる。

 松井が去年の自分と向き合う。

「ワインドアップに関しては、正直失敗かなっていうのがあって。プラスを言えば、先発をやったことで、気持ち的に幅が広がったっていうことですかね」

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